「教育基本法」の国民的合意を得ないままの「改正」に反対する声明

                      奈良教育大学構成員有志一同

 現在開催中である臨時国会の衆議院本会議において、政府・与党は11月16日、
「教育基本法改正法案」を、野党4党が欠席する中で強行採決し、参議院に送
付 しました。教育基本法は、わが国の大学教育を含めた教育全体の基本的な理
念を 規定する、教育の「憲法」とも言うべききわめて重要な法律です。現行法
の不備 や問題点、改正の必要性について、国民的な合意のないまま改正を強行
するべき ではありません。

 ところが、これまでの審議において、今なぜ「改正」が必要なのかについて
の 説得力のある理由は何ら示されてこなかったばかりか、「改正案」には、戦
前の ような教育の国家統制を可能にしかねない内容が盛り込まれており、教育
学の専 門家を始めとする各方面からの批判や反対の声が上げられています。ま
た、全国 公立小中学校校長の66パーセントが「改正」に反対し、保護者の実
に88パー セントが「改正案」の内容を「よく知らない」と答えているといっ
た調査結果も 報告されており、「改正」に向けての国民的な合意が形成されて
いるとはとても 言い難い状況です。

 さらに、国民の意見を広く求めるために行われていたはずの政府主催のタウ
ン・ミーティングにおいて、「改正」に賛成する「やらせ質問」が仕組まれて
い たという驚くべき事実が明らかにされました。これは、政府による世論の
「偽装 工作」とも言える重大な問題であり、法案提出者としての政府への国民
の信頼を 根底から揺るがすものです。

 私たちは国立大学の教育学部という、わが国の教育及び教育者養成に対して
公 共的な責任の一端を担う機関の構成員として、このような状況の中で教育基
本法 の「改正」が強行されることを黙過することはできません。衆議院におい
て採決 が強行されたことに断固抗議するとともに、参議院においては決して国
民的合意 のないままにこの重要な法律の改正が強行されてしまうことのないよ
う、慎重な 審議がなされることを強く求めます。

 あわせて、わが国の教育に対して公共的な使命と責任を担うあらゆる組織、
機 関においても、この「改正」問題についての真摯な検討がなされ、それに基
づい た積極的な発言や行動が行われることを切に希望します。

2006年12月3日

【呼びかけ人】(50音順)
生田 周二(教育実践総合センター 人権教育・社会教育)
石田 正樹(理科教育講座 生命・地球科学)
伊豆藏好美(社会科教育講座 哲学・倫理学)
井深 雄二(学校教育講座 教育経営学)
大山 明彦(教育実践開発講座 文化財保存修復)
内田惠美子(生活科学教育講座 被服学)
片岡 弘勝(学校教育講座 生涯学習)
越野 和之(教育実践開発講座 障害児教育学)
今  正秀(社会科教育講座 歴史学)
玉村公二彦(教育実践開発講座 特別支援教育)
長友 恒人(教育実践開発講座 古文化財科学・年代測定学)
日高 佳紀(国語教育講座 国文学)
平賀 章三(理科教育講座 生命・地球科学)
安田 寛 (音楽教育講座 音楽科教育)

【賛同者】
(教職員)(計80名)

(学 生)(計23名)