『高知新聞』2006年12月8日付

守れ教育基本法 県内元校長340人改正反対


「愛国心や偏差値で、人間を測っていいですか?」「人間を壊していいんです
か?」。雨の集会で、元小学校校長の声が響いた。戦後教育の柱となってき
た教育基本法の改正案が国会審議で重大局面を迎える中、県内の小中高の
元校長たちが「改悪反対」の声を上げている。その数は7日までに340人に達
した。思想、信条を超えて多数の元管理職たちが反対の声を上げる本県は、全
国でも極めて異例だ。

「この闘いは国会外の多くの声にかかっている。どんどん反対のネットワークを広
げよう」

7日昼。高知市役所前の改正反対集会には、約100人が集まった。傘からぽた
ぽた落ちるしずくにぬれながら、マイクを握るのは平成元年から吾川郡春野町の
東、西小校長を歴任した山本忠智さん(74)=同市丸ノ内1丁目=だ。

「愛国心だとか偏差値だとかで、人を測っていいんですか? 金子みすゞは『みん
なちがって、みんないい』と言った。人間一人一人の個人の価値を尊ぶのが教育
基本法です。改正法案を葬り去る日までがんばろう」

張り上げた大声に、拍手がわいた。

集会を主催したのは「子どもと教育を守る県連絡会」。9月から県内の元校長たち
を訪ね歩き、「改悪反対のアピール」への賛同を集めた。

アピールは「わたしたちは教育基本法の改悪をやめさせ、現行の教育基本法のも
とで、一人一人の子どもたちが健やかに成長できる教育をめざします」の一文だけ。
思想や信条、宗教、出身組合などにかかわらず、その一点で一致できる人は賛同
者に名を連ねてくれるよう頼んだ。

その結果、全日本教職員組合(全教)や日本教職員組合(日教組)などに属した経
験のある校長だけでなく、組合経験のない校長から賛同者が続々。1週間でたちま
ち160人を突破した。中でも幡多地域は存命している退職校長の9割がアピールに
名を連ねた。

「現職時代に立場を違えた人が、びっくりするほどたくさん賛同してくれる。他の県に
はないことで、高知の風土らしいと思う。今の教育の問題は、教育基本法が悪いか
らじゃない、教育基本法が形骸(けいがい)化しているから。元校長は戦争を知って
いる世代が多く、憲法改正に危機感を持っている。教育基本法改正の向こうに『軍
靴の音が聞こえだした』という人が多い」と山本さんは話している。