『読売新聞』2006年12月8日付

「連合教職大学院」準備進む…京都の6大学


京都の6大学が国立と私立の枠を超え、「連合教職大学院」を開学する準備を
進めている。大学間の単位互換制が定着している京都ならではの取り組みだ。

教職大学院は、即戦力となる優れた新人教員や、学校現場で中核を担う教員
の育成が狙い。教科指導や学校経営などの理論や実践について、専門的な教
育を行う。7月の中央教育審議会の最終答申でも創設の必要性が盛り込まれた。

創設論議が高まった背景には、教員の大量退職時代を前に各地の自治体で採
用者数が急増している現実がある。教師の〈量と質〉の両立が課題となる中、教
職大学院には、〈質〉確保の面で切り札としての期待がかかっている。国立、私
立を問わず、各大学が2008年4月の開設を目指して準備を進めている。

京都で連合教職大学院の構想に参加するのは、京都教育大、京都産業大、京
都女子大、同志社女子大、佛教大、立命館大。

構想では、不登校やいじめなどの教育相談や生徒指導、学校経営など10科目
を設ける方針。実践面を重視し、事例研究を中心にした授業編成を計画している。
各大学が連携することで校長経験者ら実務に通じた指導スタッフを確保しやすい
のが利点。京都府教委と京都市教委の指導主事らもスタッフになる予定だ。

京都教育大のキャンパスに加え、大学院生が通学しやすいようにJR京都駅前の
サテライト教室などで授業を開く方針で、定員は60人。単独で教職大学院の開設
を目指す大学と同様、08年4月の開設を目標にしている。

10月から「連合大学院による教員養成高度化京都モデル」と名付けた先取りのプ
ロジェクトも始まった。

学校経営を担う幹部候補を養成する「学校の組織構造と経営実践」と、不登校と軽
度発達障害児への対応について専門知識を持つ教員を育てる「不登校と発達障害」
の2科目について、6大学で共同で講義を行っている。事例研究や小中学校を訪問
して校長らから聞き取りをすることなどを盛り込んでおり、計25人の大学院生と現職
教員らが受講している。

京都では、国立、私立49大学が加盟する財団法人「大学コンソーシアム京都」を通
じて大学間の単位互換が活発で、連携の下地はできていた。今後、京都市立芸術
大や京都橘大、京都ノートルダム女子大、京都文教大、同志社大、龍谷大などにも
連合教職大学院への参加や、スタッフの派遣などを呼びかけていく。

京都教育大の武蔵野實副学長は「大学の街・京都らしい試み。連携することで各大
学の得意分野を生かせる利点がある。国立と私立の垣根を取り払った新しいモデル
を作りたい」と話している。(小林元)