『毎日新聞』2006年12月2日付

3大学学長懇談会:地域に果たす役割は 矢祭で意見交換、教育問題も話し合う /福島


福島、宇都宮、茨城の3国立大学法人学長が集まって、大学の地域に果たす役
割や教育問題について話し合う「3大学学長懇談会」が11月30日夜、矢祭町の
ユーパル矢祭で開かれた。

福島大の今野順夫学長は県の各種審議委員などを務めて地元事情に詳しく、宇
都宮大の菅野長右衛門学長は桑折町の出身、茨城大の菊池龍三郎学長は矢祭
町に隣接した茨城県大子町出身で、妻が矢祭町出身であることなどから、3県の
ほぼ真ん中に位置する矢祭町で懇談しようと企画された。

今野学長は、自治体合併の審議委員を務めた経験から「合併論議の中で矢祭町
は象徴的な存在だった。大学として自立しようとする地方自治の原点を支援しよう
としている。大学生き残りのためにも、地域に存在感のある方向を目指す」と述べ
た。

菅野学長は「大学は教育研究の機関であり、サービス機関ではないが、社会貢献
も重大な使命だ。大学法人の運営を考えると、貢献したらリターンを期待したい」と
大学運営と地域のかかわりについて持論を述べた。

菊池学長は「矢祭町への注目度は高い。図書館作りに寄せられた本の数もそれを
物語っているが、今後は町民がどれだけ本を読むのかが課題だ。本を読むことは思
考力の訓練に役立つ。『矢祭町には物知りが多い』といわれるようになるよう期待し
たい」と述べた。

講演の後、中学校長などを交えて教育問題についてディスカッションが行われ、「過
疎地方からの大学進学を促進しようと『過疎推薦』を検討したが、教育を終えたあと
過疎地に戻っても受け入れ先がない、ほかの地域に送り出すのではかえって現地
の過疎を促進させてしまうというので見送った」など教育現場からの率直な意見も出
ていた。【和泉清充】