『毎日新聞』2006年11月30日付

<看護基準>見直しへ 人手不足が深刻化


厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は29日、06年
度の診療報酬改定で7月に変えたばかりの看護師の配置基準を見直す方向
で議論に入った。政府は「看護師1人で患者7人」という手厚い看護体制(7対
1)を敷く病院の収入を高くなるように設定したが、大病院が看護師の囲い込み
に乗り出し、中小や地方の病院が看護師不足に陥っている現状を受けたものだ。

今年7月、「7対1」の入院基本料は、1日1万2690円から1万5550円に増額
された。手厚い看護で患者の入院日数を減らす目的だった。しかし、看護師増
が増収に結びつくことに目をつけた大手医療機関が採用増に奔走。中小があ
おりを受けているとされ、横浜市の中堅病院は「看護師不足は深刻。廃院の危
機だ」と訴える。

500床の病院の場合、「10対1」なら年間の入院基本料収入は約23億2000
万円。なお、500床の病院で10対1を達成する場合、実際には250人の看護
師が必要なため、昨年まではこの体制を2対1と呼んでいた。だが看護師は3
交代勤務で、常時250人体制ではないため、今年度から表記を10対1に改め
た。

10対1を「7対1」にすれば108人の増員となる半面、収入は約5億2000万円
増える。増員分1人当たりの人件費を482万円未満にすれば、増収となる。

厚労省によると、5月に7対1の医療機関(一般病棟)は280病院(4万4831床)
だったのに、10月1日時点では544病院(10万3836床)へと倍増。07年度の
看護師採用内定数は、国立大学病院(45施設)が前年比2212人増の4509人
なのに対し、済生会(81施設)は58人減の1583人にとどまっている。

29日の中医協総会では、「小病院はもっと採用難だ」などと危機を訴える声も飛
び出した。今後、7対1の報酬を厚くする基本は変えないものの、対象を救急や産
科など、人手不足感が深刻な病棟に絞ることなどが議論される見通しだ。【吉田啓
志】