nikkeibp 2006年11月30日付

有力研究大学に資金を支給、文科省の新施策がスタート


財務省が平成19年度予算を編成する時期が2006年12月に迫り、各有力
“研究大学”は、文部科学省の新施策「グローバルCOE(Center Of Excellence)
プログラム」向けの提案内容の詰めを急いでいる。グローバルCOEプログ
ラムは文科省の平成19年度の目玉施策であり、概算要求231億円に上る。
内閣府の科学技術総合会議が「S」評価を下した、優先順位が高い施策で
ある。

研究大学とは、行政府(各省庁)が提供する競争的研究資金を多く獲得し、
優れた教育・研究環境を整備し、教育と研究の両面で成果を上げている大
学を意味する。有力研究大学にとって、グローバルCOE拠点に選ばれると、
多額の教育・研究資金を確保できることになる。優れた教育・研究環境を
つくると、その中から新たな研究資金を獲得する研究成果がさらにいくつ
も誕生するからだ。グローバルCOEに選ばれることは、今後も研究大学で
あり続けられるかどうかを大きく左右するのである。

グローバルCOEプログラムは、平成19年度から23年度(2007年度から2011
年度)までの5年間に約150拠点を厳選して選び出し、国際的な教育・研究
拠点づくりを実践する。各研究大学の大学院の博士課程を持つ専攻(部局
によって名称は異なる)・研究所などは、それぞれ独自のグローバルCOE
提案を提出し、その内容を競う。提案内容は、国際的に見て特色あるオン
リーワンの教育・研究活動を実践し、これを世界に発信する内容であるか
どうかが重視されるようだ。

グローバルCOEプログラムは、現行の「21世紀COEプログラム」の後継プロ
グラムだ。21世紀COEプログラムは平成14年度から16年度(2002年度から
2004年度)までの3年間に274拠点を選び出し、5年間にわたってCOE拠点
づくりを支援しているところだ。支援の最終年度は平成20年度(2008年度)。
初年度の平成14年度に選ばれた113拠点が最終年度を迎えた今年度に、
ポスト「21世紀COEプログラム」としてグローバルCOEプログラム施策が立案
された。

学際・複合・新領域分野は5年間続けて毎年度採択

初年度は、平成14年度の21世紀COEプログラムと同様に、「生命科学」「化
学・材料科学」「情報・電気・電子」「人文科学」「学際・複合・新領域」という
5つの学術分野の中からグローバルCOE拠点を選ぶ。「学際・複合・新領域」
分野では原則として15〜20拠点を選ぶ。それ以外の4分野では原則として
それぞれ10〜15拠点を選ぶ見通し。この結果、平成19年度に5分野合計で
約60拠点を選ぶもよう。

平成20年度は「医学系」「数学・物理学・地球科学」「機械・土木・建築・その
他工学」「社会科学」の4分野でそれぞれ10〜15拠点を、「学際・複合・新領
域」分野から15〜20拠点を選ぶ予定。5分野で合計約60拠点を選ぶ計画で
ある。残りの3年は毎年、「学際・複合・新領域」分野だけを実質的に約10拠
点を選ぶ計画だ

若手研究者に対する各拠点の支援態勢を問う

平成19年度から23年度までに、グローバルCOEプログラムで選ばれる拠点
は合計で約150となる。21世紀COEプログラムが合計274拠点採択したこと
に比べて、約半分強に絞り込む。選ばれた拠点には、毎年度、5000万〜5
億円の競争的研究資金を支給する。1拠点当たり1年度に平均で1億3000
万円を支給すると見積もられる。

現行の21世紀COE拠点の中で卓越した拠点は継続させるが、新規性と将
来性の視点で審査し、できるだけ新規の拠点を採用する方向だ。拠点は、
若手研究者や博士課程の学生が独立して研究に専念できる環境を整備し、
彼らへの経済的支援の強化を盛り込んだ企画を提案することが期待されてい
る。

グローバルCOEプログラム委員会の委員長は、独立行政法人理化学研究所
の野依良治理事長が就任した。安倍晋三内閣の教育再生会議の座長を務め
ながら、「知識基盤社会の実現に向けて、グローバルCOEプログラムによって
日本の大学院の抜本的改革を図る」と言う。グローバルCOE拠点に採択され
た拠点の国際競争力を審査・評価するために、外国人研究者などによる審査・
評価を導入する構えだ。日本の有力研究大学群が国際的に通用できるかどう
かが問われることになる。

通常の財務省の予算編成進行を考えると、2006年12月下旬から2007年1月初
め頃までに、文科省はグローバルCOEプログラムの公募要領を公表し、同1月中
旬に公募説明会を開催する見通し。2007年2月上旬に公募提案を受け付け、3月
に書類審査し、その後に候補提案のヒアリング審査を実施するなどのスケジュー
ルを予定する。

(丸山正明=日経BP産学連携事務局編集委員)