『毎日新聞』2006年11月29日付

火災:京大理学部で 放射性物質に燃え移ったら…暖房初日、関係者震える /京都


◇暖房入れた初日に関係者震える

京都大理学部1号館(左京区)で28日起きた火災は、空調用ダクトの一部を
焼いて約2時間後に鎮火した。大事には至らなかったが、現場近くには放射
性同位元素(RI)の保管室があり、関係者らは「もし燃えたのが放射性物質
のある部屋だったら」と声を失った。【谷田朋美、細谷拓海、椋田佳代】

消火活動中の現場では、放射線検知のため防護服を着た消防隊員が慌た
だしく出入り。建物の四方には黄色い非常線が張り巡らされ、館内から避難
した学生や職員らが遠巻きに見守るなど一時騒然とした。市消防局と下鴨署
の調べでは、燃えたのは地下1階の廊下にあるダクト。金属板を二重に重ね
た構造で、2枚に挟まれた断熱材が燃えたという。この日、今冬初めて暖房を
入れたといい、関連を調べている。

同館地下で実験中だった大学院理学研究科博士課程2年の鶴野瞬さん(25)
によると、廊下に出て焦げたにおいをたどると、ダクトから白煙が出ていた。し
ばらくするとダクトから出火、駆けつけた同研究科助手の川口真也さん(30)
らと消火器で消し止めたという。鶴野さんは「目の前の火を消すのに精いっぱ
いだったが、もしもを考えると恐ろしい。燃え移らなくてよかった」と胸をなで下
ろした。

京都大によると、学内の二十数カ所でRIを扱っており、RIを扱う部屋の壁や床
はコンクリートを厚くして漏えいを防止。使用者への講習などの危機管理策もとっ
ているという。同大学施設・環境部は「最悪の場合を想定した危機管理を行って
いる」とする一方、「放射性物質を扱う以上リスクはゼロとは言えない」とも。今回
の火災への対応についても調査するという。