『朝日新聞』2006年11月28日付

島根大、がん専門医養成コース新設へ 国の構想に先駆け


都道府県初の「がん対策推進条例」を今秋作った島根県で、がん治療の専門医
を養成するコースが、島根大学大学院医学系研究科に来年度新設される。文部
科学省などのがん治療の専門家を育てる構想に先駆けた試みだ。

新設されるのは、大学などをすでに卒業した医師を対象とする「腫瘍(しゅよう)専
門医育成コース」。内科や外科など縦割りの枠を超えて、様々な部位のがんにつ
いて、化学療法などの臨床と研究をバランスよく経験させる。現在は全国に47人
しかいない「がん薬物療法専門医」(日本臨床腫瘍学会)の認定を目指す。募集
定員は若干名。

島根県の05年のがん死亡者は人口10万人当たり333.4人で、全国平均(258.2人)
を大きく上回る。出雲市在住でがん患者の全国組織代表だった佐藤均さん(昨年
6月死去)らがこうした現状の解消を訴え、専門医の充実などを求めて活動。国の
がん対策基本法成立にもつながった。

文科省は、がん医療の担い手を育てるため大学院の教育を充実させようと、来年
度予算に40億円を概算要求し、10〜15前後の大学を重点的に支援することにし
ている。同省医学教育課は、「腫瘍専門医の育成コース設置は、ほかには聞いて
いない。支援対象は地域バランスなどを考え選ぶが、島根大の取り組みは注目し
たい」としている。