『産経新聞』主張 2006年11月22日付

■慶応と共立薬大 合併で国際競争力高めよ 


慶応義塾大と共立薬科大が合併に向けて協議に入ることで合意し、早ければ平
成20年度から慶応に薬学部と大学院薬学研究科が新設される。本格的な私大
再編時代の幕開けといえる。

慶応は安政5(1858)年創立の総合大学で、共立薬科大は昭和5(1930)年に
設立された単科大学だ。ともに歴史を持つ伝統校である。共立薬科大にとっては、
薬学教育が4年制から6年制になり、新たに義務づけられた現場実習を慶応大学
医学部付属病院で行えるという利点がある。慶応も、薬学部を持つことで社会貢
献の領域を広げたいとしている。

共立薬科大の学生からは、「名前がなくなるのは寂しい」「慶応とは校風が違う」
との声も聞かれる。共立薬科大の前身である共立女子薬学専門学校時代からの
伝統や校風を損なうことなく、新しい時代に向けた医学と薬学の連携を目指してほ
しい。

日本の大学は、世界の大学との国際競争にもさらされている。特に、医学などの分
野での競争は熾烈(しれつ)だ。合併により、国際競争力がどこまで高められるかに
も注目したい。

少子化の影響で、選ばなければ全員が大学に入れる「大学全入」時代が来年度に
も到来する。合併はそうした時代に備えた生き残り策でもある。

すでに、国立大学では、法人化(平成16年)の前後から、山梨大と山梨医科大、富
山大と富山医科薬科大などが合併し、大阪大と大阪外国語大も来秋に合併する予
定だ。公立では、東京都立大が都立保健科学大などを統合して首都大学東京になっ
た。私学の合併は、関西学院大と聖和大にとどまっていたが、今回の慶応と共立薬
科大の合併協議により、他の私大の統合にもはずみがつくとみられる。

各大学は受験生確保にもしのぎを削っている。東大でも、大阪などで説明会を開き、
優秀な受験生獲得をねらっている。他方、今春の入試で定員割れした私大は4割を
超えた。募集停止に追い込まれた私大もある。

これからは、世界的な研究や高度な専門教育を行う大学がある一方で、幅広い教養
教育や地域に密着した生涯学習などを行う大学も必要だ。各大学がさまざまな役割を
担い、それぞれの特色を競い合う時代である。