『朝日新聞』2006年11月20日付

大学サバイバル、主戦場は中国 学生確保へ現地入試盛ん


同志社大留学生別科は6月、北京の中国人民大学で入試をした=同志社大提供

大学、短大などへの留学生の推移

「少子化社会」を迎え、私立、国公立を問わず国内の大学で、中国を中心とし
たアジアの留学生の獲得競争が熱を帯びている。日本は間もなく募集定員と
受験者数がほぼ並ぶ「大学全入時代」。各大学は「国際競争に勝つ優秀な学
生の確保」や「定員の確保」などを目指し、海外での留学生争奪戦を繰り広げ
ている。

    ◇

北京の首都師範大で今月6日、日本の12大学が中国の学生向けに大学院留
学の合同説明会を初めて開いた。

北海道大、東北大、東大、名古屋大、広島大、九州大などがブースを設け、約2
50人の中国人学生にパンフレットを配ったり、奨学制度を説明したりした。

説明会の開催を呼びかけたのは、4年前に首都師範大内に事務所を設けた広
島大。同大には727人(5月1日現在)の留学生がいるが、4割を超える321人
が中国からの留学生だ。同大大学院理学研究科学生支援室は「中国人留学生
は博士課程後期まで進む率が高い。優秀で熱心な学生を集め、レベルアップと
大学院生の定員の確保を狙っている」と話す。

北海道大も今年4月、北京大の近くに事務所を置いた。鈴木賢・北京オフィス所
長は「他の国立大学と比べ、留学生の割合が少なかった。説明会で学生の掘り
起こしができる」と期待する。

国際的な競争力に危機感を抱く東京大は、法人化後、世界最高水準の研究教
育を目指してアジアとの連携強化を目標に掲げている。武内和彦・国際連携本
部長は「国内の人材だけに頼っているだけでは国際的な競争力はつかない。
人口の多い中国から、これまで米国に留学していたトップクラスの学生をいか
に東京大に呼ぶかが極めて重要になる」と力説する。

    ◇

現地入試を実施する大学も急増している。同志社大は、日本語や日本文化を
学ぶ留学生別科の入試を昨年から北京で、今年からは上海でも始めた。以前
は書類審査と日本語を吹き込んだ録音テープで合否を決めていたが、他人が
書いたとみられる書類が送られてくるケースなどもあり、本人の能力や意思を
正しく判断するため導入した。

今年6月と10月に実施した試験には、2カ所で計60人が受験。国際センター
の沖田行司所長は「受験生の経済的負担が軽くなり、すそ野が広がってレベ
ルの高い学生が多く集まるようになった」と話す。

関西での海外入試の先がけは、大阪産業大(大阪府大東市)だった。99年か
ら中国で3学部と短大、大学院2研究科で実施し、留学生の授業料を半額免除
する制度も始めた。06年には中国、韓国の4会場で入試をし、毎年100人近く
が受験している。

木村建一朗・入試戦略担当部長は「この数年で海外の競争は激化している。内
モンゴルの日本語学校で、40近い日本の大学が入試をする例もある」と話す。

日本学生支援機構によると、日本の大学や短大などへの留学生数は05年5月
1日現在で12万1812人。中国からが最も多く、うち8万592人を占める。