しんぶん赤旗2006年11月19日付 教育基本法改悪 公聴会で問題点鮮明 教育でなく調教だ/子どもの発達支援欠く 自民・公明両党が強行採決で衆院を通過させ、参院で審議入りした教育基本法 改悪法案。十五日の衆院特別委員会での強行採決は、午前中の中央公聴会で何 人かの公述人が「充実した審議がもっと必要だ」と訴えた直後でした。この間 の中央、地方公聴会では、改悪法案の根幹にかかわる多くの問題点が浮き彫り になりました。 ■愛国心強要 改悪法案は第二条で、「我が国と郷土を愛する態度」など二十におよぶ徳目を 列挙し、その目標達成を義務付けています。十五日の公聴会で、教育の目標が 明記されたことを「大変評価している」とする公述人がいる一方、憲法一九条 が保障する思想・良心の自由を侵害する問題点が指摘されました。 西原博史・早稲田大教授は、特定の考えを唯一正しい考えとして受け入れろと いうのは、「教育ではなく、子どもの調教と呼ぶべきことだ。子どもの人格を 尊重したとは考えられない」と批判しました。 広田照幸・日本大教授は、「たくさんの教育的な目標が細かく学校現場でなさ れなければならなくなり、窮屈で息が詰まる教育現場になってしまう」と危ぐ を表明。「そもそも教育の現場で(改悪法案の)二条のような教育の諸価値の 部分は教えられるのか」と疑問を呈しました。 十三日の地方公聴会では、札幌会場で岩本一郎・北星学園大学教授が「教育の 目標を基本法に盛り込むことは、憲法的にも法理論的にも間違っている」と批 判しました。 ■国家の介入 また改悪法案が、国家の教育への介入を無制限にし、教育の自由に反する問題 もあります。現行一〇条は、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全 体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」としています。改悪法 案は、「国民全体…」以下を「この法律及び他の法律の定めるところにより行 われるべき」と改変しています。 これについて、伊吹文明文科相は「法律に基づいて行われる教育行政は、不当 な支配には属さない、堂々と正当なものである」(十五日の特別委員会)と言 い切っています。 十五日の公聴会で、出口治男・日本弁護士連合会教育基本法改正問題対策会議 議長は次のように批判しました。 「教育の内容を党派的利害を反映した法律でいかようにもつくることができ、 教育行政による教育現場の直接支配を可能にする。国が愛国心や公共の精神な どの概念を子どもたちに教え込むことが可能になる」 西原氏も「教育の内容を政府の意向に服従させてしまおうとする構造に傾いて いる」と指摘し、「政府の意向に異を唱える人々を不当な支配として排除する のではないか」と危ぐしました。 ■格差と競争 安倍内閣は、教基法改悪法案を成立させ、学校選択制や教育バウチャー(利用 券)制の導入など、教育に格差と競争を持ちこむ「教育再生プラン」の導入を 狙っています。 安倍晋三首相は、十五日の特別委で、「それぞれの学校に緊張感を与えるよう 外部評価制度の導入も図れないかと考えている」と述べました。また、教員免 許制度の導入や現職教員の研修制度、能力や実績で教員の給与に差をつける制 度の検討にふれました。 この問題で、西原氏は、「一部のエリート集団ができ、それ以外のグループが 早めにドロップアウト(落ちこぼれ)させられる現象が今の政策の先にあるか もしれない。子どもたちの発達機会に対する支援がきちんと行われない問題が ある」と述べました。 広田氏は「教員のしりをたたいてシステムを活性化させよう、子どもたちや学 校でしりをたたいて競争させようという、長期的にはずいぶんしんどいシステ ムになってしまうような気がする」と発言しました。 十三日の地方公聴会でも大分会場で清原今朝勝・市立中島小学校元校長が「外 部が学校を評価することは、非常に難しい」と語っています。 |