『毎日新聞』大阪版2006年11月18日付

教育基本法改正:参院で審議入り 「在日の子はさらに委縮」3世の金光敏さん


愛国心教育強まれば「在日の子はさらに委縮」−−学校飛び回り支援する金光
敏さん指摘

教育基本法改正案が17日、参院で審議入りした。教育の機会均等を定めた現
行法の下でも、十分な教育を受けられなかった在日コリアンらは複雑な思いを
抱いている。

大阪市生野区の在日3世、金光敏(キムクァンミン)さん(35)の亡くなった母呉
勝子(オスンジャ)さんは戦後、鉄くずを拾って家計を助ける傍ら、小学校に通っ
たが、教室で「外人」といじめられ、自然に足が遠のいた。

それでも、国語辞典を引きながら懸命に新聞を読み、子どもたちの学校の書類
はたどたどしい字を書いて提出した。「私は、学校に通えんかったから頭が悪い。
あんたは高校に行っておくれ」。そう嘆く母がふびんで、恥ずかしかった。狭い長
屋の一室で靴作りの内職を続け、金さんが高校生の時、がんのため42歳で亡く
なった。

教育基本法制定から59年。在日の人々にとっては、その理念が十分に生かされ
てきたとは言いがたい。日本在住の外国人が約200万人に達し、学校現場の多
国籍化は進む一方だが、在日の子どもたちの多くは本名を隠しながら生きている
という。

在日コリアンの教育支援の専門家として、府内の学校を飛び回る金さんは「愛国
心教育が強まれば、在日の子はさらに委縮する。改正案を進める人々は、日本
の学校には、日本人の子どもしかいないと思い込んでいる」と指摘する。【大場
弘行】