『北國新聞』社説 2006年11月17日付

教基法改正 党利優先に映る審議拒否


教育基本法は「教育の憲法」であるから、その改正には与野党の歩み寄りが望
ましいとする自民党の主張が野党側から拒絶され、衆院では教育基本法特別委
に続き十六日の本会議も野党欠席のまま自民、公明の与党などの賛成多数で改
正案が可決、参院に送付されたのはまことに遺憾だ。

そもそも政府案と野党第一党の民主党案には本質的な相違はなく、むしろ愛国心
については民主党案の方が具体的でよかったほどである。伊吹文明文科相などは
特別委での発言の中で「政府案がすべてとは思っていない。双方の案の中でいい
ものを作っていただければありがたい」と協力を求めたくらいだ。

それがなぜ歩調を合わせた審議拒否になったのか。対案を出した民主党には改正
に前向きな議員も多いといわれる。もともと共産、社民両党とはスタンスに開きがあ
るといわれていた。十九日投開票の沖縄県知事選などをはじめ来年の参院選まで
視野に入れて、野党側が反自民という姿勢を押し通すために共同歩調の審議拒否
となったと見る向きがある。

ここへきて対案そのものが政府案に反対するためにまとめたものだったともいわれ
ている。となると、党利党略優先に映るのである。

これまでの審議を振り返ると、必修科目未履修問題、幼い命を自ら断つ悲しい事件
まで伴ういじめ問題、「やらせ質問」問題が暴露されたタウンミーティング等々によっ
て、こういっては何だが、文科省や教委、学校現場の責任を問う方向へと審議が揺
れて、本筋とは違う方向へそれてしまったのである。

そこへさらに麻生太郎外相らの「核論議」が加わった。一枚岩とはいえない野党側
は麻生発言をとらえ、外相罷免を求めているが、その裏には安倍政権が最重要課
題とする教育基本法改正案や防衛庁の省への格上げ案などを先送りする作戦が
あるという、うがった見方さえ出てきたのである。

与党側には参院の審議で野党が求めれば修正に応じる動きがあるそうだが、党
利党略が優先されれば、それすら不確実だ。教育基本法改正を、教育再生につ
なげるために、与野党とも大きな視野に立って公益を優先させてほしいものだ。