『朝日新聞』2006年11月17日付 声欄

生の声封じた「やらせ」現場

小学校教員 高橋 達郎 (福島県川俣町 50歳)


私は小学校教員として文部科学大臣にぜひ訴えたいことがあり、原稿を用意して9
月2日の「教育改革タウンミーティング八戸」に福島から参加した。

大臣の挨拶と教育基本法改正案の説明後、司会者が挙手発言を催促。1人3分で3
人1区切り。壇上の大臣、中教審委員ら3人が長々と答える。3区切りで9人が質問
や意見を述べた。

私は何度も手を挙げたが、司会者は当ててくれない。PTA関係者、大学生などが教
育基本法改正への賛成意見などを述べる。残り10分、司会者があと「1人」と言い、
私は立ち上がって叫んだ。「教育改革の話なのに現場の小中学校の教職員の意見があ
りません」と。司会者に注意を受け、結局、小学校教職員の発言はゼロ。意見を聞く
べき壇上の3人は約90分話し、意見を言うべき「国民」は10人で30分話しただ
け。私を含めて多くの参加者が手を挙げていたのに。

私は、小学校の学級担任が多忙で、勤務時間にその日の授業の評価反省と、翌日の
授業の準備ができない実態をどう考えるかを問い、それをできるようにしない限り、
どんな教育改革も成功しないだろう、という意見を言いたかった。

タウンミーティングの開催費は、1回当たりの平均で1100万円という。八戸で
は10人中6人が「やらせ」だった。学校現場の教職員の願い、その声を聴こうとし
ない「教育改革」文科省。こんな形で世論を「偽装」し、教育基本法「改正」を強行
することは許されない。