『産経新聞』主張 2006年11月15日付

教育基本法改正 今国会で早期成立を図れ


憲法と並ぶ国の基本法である教育基本法の改正案が今国会で成立するかどうか
の重要な局面を迎えている。

与党は15日の中央公聴会終了後、衆院教育基本法特別委員会で政府案を採決
し、16日の衆院本会議採決を目指している。来月15日の会期末を控え、参院で
の審議時間を確保するために週内の衆院通過は譲れないとしている。

野党は「審議は尽くされていない」と採決阻止で、時間切れに追い込む構えだ。審
議は先の通常国会の50時間に、今国会の46時間を加えると100時間近い。既に
政府案は3年に及ぶ与党協議会での議論を踏まえ、民主党案も2年近い検討を重
ねてきた。

求められているのは、学校でのいじめや家庭での虐待など、荒廃する教育現場を
根本から再生することだ。政府案は完璧(かんぺき)ではないが、戦後教育のゆが
みを正し、健全な国家意識や家族観をはぐくもうという改革案である。今国会で速や
かに成立を期すべきだ。

政府案と民主党案が提案された前国会以来、より良い案にすることを促してきた。政
府案は「国と郷土を愛する態度」などの育成をうたっているが、民主党案は「日本を愛
する心」と「宗教的感性」の涵養(かんよう)を盛り込み、評価できる内容だったからで
ある。

しかし、民主党は与党との協議に応じることなく、教育基本法の改正そのものに反対
する社民党や共産党と歩調を合わせ、徹底抗戦するという。

民主党は衆院安全保障委員会での防衛「省」昇格関連法案の審議にも欠席した。最
近も小沢一郎代表が「国防の任に当たる省庁が内閣府の一外局でしかない状態は良
いことではない」と述べたことは一体、何だったのか。

民主党は、19日投開票の沖縄県知事選で野党統一候補を擁立した。現在の対決路線
はそれまで野党共闘にヒビを入れるのは避けたいという思惑なのだろうが、政権を目指
す責任政党の対応といえるだろうか。

安倍晋三首相は「法案を広く深く議論し、速やかな成立を図ってもらいたい」と述べたう
えで、会期延長については「考えていない」と否定した。

与党内でも沖縄知事選への影響を考慮して週内の採決を見送る意見があるという。国
家の根幹の問題は地方選と絡めず、粛々と決着させるべきだ。