『朝日新聞』2006年11月11日付

聴衆の半数は関係者 質問は県職員 タウンミーティング


政府主催の教育改革タウンミーティング(TM)で「やらせ質問」があった問
題で、大分県教委は10日、政府の質問案に沿って発言したのは県教委の
職員4人だったと発表した。また、青森県八戸市では県や市教委が集めた
教員ら「関係者」が参加者の半数以上を占めていたことが明らかになった。
質問の自作だけでなく、教育関係者が自ら演じ、聴衆まで身内で固めようと
した実態が浮かび上がってきた。

大分県教委によると、別府市で04年11月にあったTMの5日ほど前に、内
閣府の担当者から「文科省とすり合わせて質問案を作った。発言してくれる
人を調整して欲しい」と依頼され、PTA役員らをいったん推薦した。しかし、
「外部の人に依頼するのは行き過ぎた行為だ」と判断し、義務教育課の男
性職員4人に発言を依頼した。質問の際は「公務員」と名乗り、質問案に沿っ
て発言していた。

職員が発言することは内閣府に伝えていたといい、政府側も「サクラ」によ
る質問を承知していたことになる。

県教委の小野嘉久企画調整室長は「内閣府の要請は受けざるをえず、か
といって外部の人にも頼めないと考えた末の判断だったが、結果的に参加
者に誤解を与えることをし、申し訳ない」と話した。

今年9月に開催された八戸市のTMでは、当日参加者のうち、半数以上が、
教員やPTA関係者などの「関係者」だった。

10日の衆院教育基本法特別委員会で、内閣府の山本信一郎官房長は青
森県や八戸市、周辺市町村の教委職員や教員ら167人と、地元PTA関係
者112人の計279人が、県や市の取りまとめで参加を申し込んだと説明。
一方、インターネットやはがきで申し込んだ一般の参加者は200人の定員
に対し、186人だったと述べた。

山本氏は一般参加者について「応募者全員に参加証を送付し、抽選は実
施していない」としたが、質問した保坂展人氏(社民)は「友人は5人はがき
で申し込んで、4人はだめだった。279人関係者を集めたら、一般国民が入
れない」と反論。塩崎官房長官は再調査する、と述べた。

内閣府によると、当日の参加者は401人。内訳は不明だが、半数以上は
「関係者」だった計算になる。

さらに八戸市での「やらせ質問」は、文科省の広報室の担当者が書き、広
報室長が了承していたことが分かった。この室長は現在、首相官邸で教育
再生会議の担当参事官をしている。

同特別委で文科省の田中壮一郎・生涯学習政策局長は「広報室の担当者
が質問項目を作り、広報室長に見せて内閣府に提出した」と説明。笠井亮
氏(共産)が「上司の広報室長は『まずい』と指摘しなかったのか」とたたみ
かけると、田中氏は「上司も『議論活性化に役立てば』と承認した」と答えた。