『東京新聞』2006年11月11日付

法人化で交付金減、ピンチ
国立大リストラの波


二〇〇四年四月に法人化された関東地方の国立十五大学が、教員数や人件費の
削減を進めたり、検討したりしていることが十日、東京新聞が実施したアンケートで
分かった。法人化後、文部科学省からの競争的資金の割合は増えたが、大学経営
の基礎となる運営費交付金が削減されたため、多くの大学が資金難に陥っていると
みられる。日本の高等教育への公財政支出は先進国中、最低レベル。こうした現状
を放置したまま競争を強化した結果、各大学の人的基盤が揺さぶられている現状が
浮き彫りになった。 

調査は今年七−八月、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬の一都六県の
十八国立大に郵送方式で行い、十五大学から回答があった。

それによると、すべての大学が人件費を削減。東京外語、横浜国立、東京海洋、千
葉、埼玉、茨城の六大学は教職員の削減も決めていた。電気通信、東京農工、群馬
の三大学は人員削減を検討中としている。

東京、一橋、東京芸術、東京医科歯科、筑波、宇都宮の六大学は、人員を削減する
かどうか不明だが、人件費を減らすことを決めていた。

千葉大は二〇一〇年度までに現在千三百五十八人いる教員を約八十人削減する予
定。茨城大も教職員九百二十六人のうち教員三十人、職員十人を〇九年度までに減
らすとしている。

法人化後に運営費交付金が減らされたことについて、多くの大学から批判の声が相次
いだ。少人数教育を実施している東京外大は「今後、非常に深刻な事態を引き起こすと
予想される」と指摘。東京芸大も「マンツーマンの少人数教育を重視している本学として
は耐え難く、例外的措置を要望したい」と、改善を求めている。

文科省の「教育指標の国際比較」によると、対国内総生産(GDP)比の高等教育に対す
る公財政支出は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で極端に少なく、デンマーク
やフィンランドの四分の一以下。米国の三分の一、英国の半分程度にとどまっている。

<メモ>国立大学法人と運営費交付金 2004年4月に全国の国立大などが法人化さ
れ、89の国立大学法人となった。文部科学省は各大学の自主性、自立性が大幅に向
上し、個性豊かな魅力ある大学になるとうたっている。一方で同省は、各法人への固定
的な資金を減らし競争的資金の割合を拡大。各法人の運営経費(固定費)として支払わ
れる運営費交付金は、05年度から09年度まで毎年1%ずつ減額されていく。例えば、
千葉大では毎年約1・6億円の減額になる。