『朝日新聞』2006年11月9日付 声欄

過度な数値化 教育に悪影響

中学校教員 吉田 功 (東京都小平市 35歳)


 最近、いじめへの対応の遅れや高校での必修科目の履修漏れなど、教育をめぐる問
題が噴出し、現場にいる者として非常に残念な思いだ。ただ、これらの責任が教員や
学校、教育委員会だけにあるような報道に接すると、果たしてそれだけなのか疑問だ。

 私は、これらの問題の根底には、過度な競争を生んだ昨今の教育改革があると思う。
例えば、いじめ件数を「ゼロ」にするとか、有名大学の進学率を幾らにする、などと
いったような数値目標を設定し、他校と競わせ、達成状況をもとに予算や給与に反映
させようとしている点である。

 こんな制度の下では、いじめの存在を無視して報告した方が評価が上がるし、履修
漏れがあっても受験対策に時間をさき、一人でも多く有名大学へ進学させる方が評価
が上がるだろう。

 ここにメスを入れずに単に管理、指導を強化しても問題は一層難しくなる。むしろ
適正な教育活動が行われるよう、現場の意欲や自浄能力を高める施策を講じることが
必要だ。教育改革が今国会の目玉だが、これまでの改革について十分検証した上での
方策を望む。