『朝日新聞』2006年11月7日付

教育基本法改正案、今国会成立強まる 衆院委が来週可決へ


 安倍政権が今臨時国会の最重要法案と位置づける教育基本法改正案が、来週
中に衆院特別委員会で与党の賛成多数により政府案のまま可決される見通しとなっ
た。与党が野党の審議要求に一部応じる形で週内をめどとしてきた採決を来週中に
先送りする判断を固める一方、民主党など野党もそれ以上採決を遅らせる審議拒否
など抵抗は困難との判断に傾いたためだ。このため今国会で成立する可能性は高まっ
たが、12月15日の会期末まで約1カ月しかないうえ、会期の大幅延長は困難で、参
院審議を含めて与野党攻防はなお続きそうだ。

 特別委は8日に仙台市などで地方公聴会を開く。与党は「採決の環境が整った」とし
て、6日の特別委理事会で9日に参考人質疑、10日に総括質疑をしたうえで採決する
ことを提案した。これに対し野党は、地方公聴会の日程追加などを要求。「10日採決の
前提では日程協議に応じられない」と与党提案を拒み、物別れに終わった。

 これを受け与党は、野党が採決に応じることを条件に地方公聴会を追加するなど出来
る限り野党の要求をくむ方針だ。10日の採決予定を先送りすれば、野党の抵抗姿勢も
弱まると判断した。

 野党の審議要求に柔軟に応じるのは参院でのスムーズな審議入りも計算に入れたも
のだ。野党が参院で審議拒否するような運びを避ければ、「来週中盤からの審議開始」
(参院自民党幹部)でも成立させられるとの判断がある。

 一方、民主党など野党4党は高校の必修科目履修漏れ問題やいじめの問題などの広
がりも踏まえ、徹底審議を求めてきた。

 だが、先の通常国会も含めると、審議は80時間程度になることは確実。さらに、履修
漏れといじめ問題の集中審議も、衆院文部科学委員会で8日に行うことになった。民主
党内では、さらに与党が審議日程で譲歩すれば、これ以上の採決先送りは難しいとの
見方が広がっている。民主党の国対幹部は6日、「来週末の採決という流れだろう。審
議拒否は難しくなった」と語った。

 政府案は、焦点の「愛国心」の規定ではその用語は使わず、「我が国と郷土を愛する
態度を養う」とする。他方、民主党案は「日本を愛する心を涵養(かんよう)する」との表
現を盛り込んでいるが、民主党は修正協議には応じない構え。このため与党は政府案
のまま採決に踏み切る方針だ。