『読売新聞』2006年10月31日付

国立大授業料、免除拡大…文科省方針


 文部科学省は30日、経済的理由で授業料の納付が困難な学生を対象にし
た国立大学の授業料免除制度の適用枠を拡大する方針を固めた。

 安倍首相が掲げる「再チャレンジ」支援策の一環で、所得による教育格差が
生じないようにするのが狙いだ。2007年度予算の再チャレンジ枠として追加
要求し、来春入学の学生から適用したいとしている。

 国立大学の授業料は、文部科学省が省令で標準額(学部や大学院で年額
53万5800円)を規定。各大学は標準額の1割増を上限に、独自に授業料を
設定している。経済的理由で授業料の納付が困難で、かつ学業優秀と認めら
れれば、授業料の全額または一部が免除される。

 例えば、ある大学では、家計の年間総所得が418万円で全額、646万円で
半額免除の資格が得られる。成績は高校2〜3年の5段階評価で3・2〜3・5
以上とし、所得と成績の基準を満たした資格者のうち、家計の所得が低い生
徒から順番に免除者を決める。

 文科省によると、2005年度前期の免除申請者は全学生数(57万6724人)
の1割弱の5万2333人。許可されたのは87%の4万5613人だった。免除資
格はあるが、予算不足で免除されなかった学生は6720人に上った。

 文科省は免除資格は緩和しないものの、予算枠を増やすことで、資格を満た
す学生は可能な限り免除されるようにする方針だ。池坊保子文部科学副大臣
は26日の参院文教科学委員会で「教育費負担軽減の観点から(減免の枠を)
拡充することが必要ではないかと考えている」と強調した。

 国立大学の授業料標準額は、私立の授業料との均衡を理由に、過去10年間で26・5%上昇。大学生や保護者の家計を圧迫しているとの指摘がある。

 一方、私立大学の授業料免除について、政府は「授業料減免事業等支援経費」として各大学への助成を行っている。文科省は来年度予算の概算要求に、従来の20億円を40億円に増やす内容を盛りこんでいる。