各位

東京大学職員組合(空閑重則委員長)は28日、第108回定期総会を
開催し、東京大学の教育研究条件・教職員の労働条件を改善するなどの
活動方針を採択しました。また、『教育基本法の真の実現を求め、教育
基本法の「改正」と廃止に反対する特別決議』を採択し、内閣・文部科学省
・各政党等に送付しました。

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教育基本法の真の実現を求め、
教育基本法の「改正」と廃止に反対する特別決議

 去る四月二十八日に第一六四通常国会へ政府が提出した教育基本法改正案は、審議
未了、継続審議となり、第一六五臨時国会において再び設置された衆議院教育基本法
特別委員会において審議されている。

 本改正案の問題点の一つは、その「国民精神統制」的性格にある。第二条は教育の
目標を、現行の学習指導要領における「道徳」の内容に準拠した徳目の実現に収斂さ
せている。この収斂は、学校教育における各種の教科教育については第六条二項にお
いて駄目押し的に確認されている。さらにこの徳目の実現は、家庭教育については第
十条、幼児教育については第十一条、社会教育については第十二条、学校、家庭及び
地域住民等の相互の連携協力については第十三条と教育のあらゆる場面で強要され、
徹底されたものとなっている。

 また、内閣および文部科学大臣の権限が無限定的に肥大化し、教育の行政による管
理統制を強める点も本改正案の問題点である。第十七条では、政府すなわち内閣が
「教育振興基本計画」を策定し、地方公共団体においてもこれを参酌した振興計画を
策定させる体制が規定されている。その一方で、第十六条は国すなわち文部科学大臣
による教育への法の名による介入も認めている。これらにより、政府や地方公共団体
における教育の全般にわたり、教育の自由を反故にして、財政措置や評価制度等を通
じた「教育の管理統制体制」が築かれている。

 大学に関しては第七条で、学校教育法では明記されない「社会の発展」への寄与を
大学の目的として掲げている。今般の情勢の下でこの規定は、経済的側面に偏重した
社会貢献すなわち産学連携の強化と関連分野への重点投資、それ以外の領域のリスト
ラなどを法的に促すものとなっている。加えて大学は、第二条で掲げられた徳目の実
現への貢献が求められ、第十七条の「教育振興基本計画」の対象として行政による管
理統制が改めて強められることになる。

 民主党が国会に提出した日本国教育基本法案は現行法の廃止を端的に内容としてい
る。民主党案もまた、「国民精神統制」的性格と行政による「教育の管理統制体制」
において、政府案と軌を一にしている。

 我々は、日本国憲法が国民に保障する思想及び良心の自由(第十九条)に対して、
法案のもつ「国民精神統制」的性格は両立しえないと考える。また国立大学の法人化
によって「教育の管理統制体制」が強められ、僅か二年半の間にその様々な問題を経
験してきた者として、我々は、法律に依拠すれば行政の教育へのいかなる介入も正当
とし、政府による無限定の教育振興基本計画策定を正当化する法案を許容することは
できない。

 教育が抱える諸問題の解決は、「国民に対し直接に責任を負って行われる」教育
(現行法第十条)と、「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として
…自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」という教育の目的(現行法第一
条)を「遂行するに必要な諸条件の整備確立」を目標とした教育行政(現行法第十
条)の下で実現されるべきものである。

 第一六四通常国会における法案審議では、愛国心の強要を批判する審議が展開され
た。しかし政府は本改正の意図について現行法の問題点の指摘に基づく説明を回避す
る一方、委員は法案審議以前の時事評論や、改憲を前提とせざるを得ない反日本国憲
法的言説を特別委員会で繰り返した。国権の最高機関(日本国憲法第四十一条)たる
国会における基本法改正をめぐる審議の実態は、立憲主義と法治国家の存立さえも揺
るがせるものとなっていた。

 我々は以上を踏まえ、教育基本法の真の実現を求め、教育基本法の「改正」と廃止
に反対する。国会が本改正案、民主党案を徹底的に審議し、両案ともに廃案とするこ
とを我々は強く要求する。

二〇〇六年十月二十八日
東京大学職員組合第一〇八回定期総会


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