『産経新聞』主張 2006年10月26日付

教育基本法改正 民主は修正協議に応じよ


 衆院教育基本法特別委員会が再開され、政府の改正案と野党の民主党案につ
いて提案理由の説明が行われた。本格的な論戦は30日から始まるが、不可解
なのは民主党までが政府案の成立に徹底抗戦の姿勢を示していることだ。

 政府案は自民党と公明党の与党合意に基づき、「我が国と郷土を愛する態度」
などの育成をうたい、民主党案は「日本を愛する心」「宗教的感性」の涵養
(かんよう)を盛り込んでいる。

 愛国心や宗教的情操教育では民主党案の方が踏み込んだ表現をしている半面、
民主党の教育行政に関する規定には日教組などが介入する余地を与えかねない
との批判もある。そうした違いはあるものの、両案は総じて共通点が多い。双
方が知恵を出し合い、より良い案にすることは十分可能である。

 同じ野党でも、社民党と共産党は対案を持たず、教育基本法の改正そのもの
に絶対反対の立場だ。対案を出している民主党が、これらの少数野党と歩調を
合わせるのは、建設的な野党として賢明な選択とはいえまい。

 過去に、与党と民主党の修正協議が実を結んだ例として、平成15年に成立
した有事関連3法などがある。教育基本法は憲法と並ぶ重要な国の根本法規で
あるだけに、その改正案はできるだけ多くの国会議員の賛成を得て成立するこ
とが望ましい。

 野党4党は時間切れに追い込む作戦のようだ。しかし、先の通常国会で、す
でに50時間の審議が行われている。与党は臨時国会であと30時間の審議を
行い、11月上旬には衆院を通過させたい意向だ。政府案は3年に及ぶ与党協
議会での議論を踏まえ、民主党案も2年近い同党教育基本問題調査会で検討を
重ねた。これ以上、いたずらに時間を費やすべきではない。

 現行の教育基本法は終戦後の昭和22年3月、GHQ(連合国軍総司令部)
の圧力や干渉を受けながら成立した。「個人の尊厳」や「人格の完成」など世
界共通の教育理念をうたっているが、肝心な日本人としてのありようがほとん
ど書かれていない。

 安倍内閣は、教育基本法改正を臨時国会の最重要課題としている。学校での
いじめや家庭での幼児虐待など、荒廃する教育現場を根本から再生するには、
今国会での成立が急がれる。