『読売新聞』2006年10月25日付

教育基本法改正案 野党徹底抗戦の構え


 安倍首相が最重要法案と位置づける教育基本法改正案の今国会での審議が、
ようやく始まる。政府・与党は12月15日までの今国会で政府案成立を図り、
「教育再生」に弾みをつけたい考えだが、野党は徹底抗戦の構えを見せ、日程
の余裕はない。民主党案には、当初の自民党の主張も盛り込まれており、議論
が混乱する可能性もある。

 ■時間との戦い■

 政府・与党は11月上旬の衆院通過を目指している。同改正案は通常国会で、
衆院ですでに49時間審議しているため、与党内では、「同様に特別委員会で
扱われた行政改革推進法は衆院で60時間余の審議だったので、今回は衆院で
あと30時間も審議すれば十分。1日6時間やれば、5日で間に合う」との声
が出ている。これに対し、民主党は「首相も担当の文部科学相も交代している。
新たな気持ちできちんとした議論をすべきだ」(幹部)と主張している。

 重要法案の場合、「参院の審議時間は衆院の3分の2程度がメド」と言われ
ることが多い。仮に、衆院が90時間だった場合、参院は60時間が目安にな
る。参院での審議入りが11月中旬としても、会期末までは1か月程度しか残
らない。自民党の参院幹部は「参院民主党に日教組出身者が5人もいて、審議
もそう簡単にいかない」と漏らしている。

 ■ねじれ■

 伊吹文部科学相は24日の閣議後、国会内で首相と約10分間協議し、その
後、記者団に「教育基本法改正案の審議が始まるので、首相と基本認識を共有
するために話をした。民主党案についても話した」と語った。

 この発言が波紋を広げた。「首相が民主党案に一定の理解を示し、修正の可
能性が出てきたのではないか」との見方が出たからだ。

 修正論がくすぶる背景には、焦点の「愛国心」などの点で、民主党案に自民
党の当初の主張が盛り込まれていることがある。

 政府案は、「愛国心」そのものの表現に反対した公明党に配慮し、「我が国
と郷土を愛する態度を養う」としている。これに対し、民主党案は「日本を愛
する心」と明記。自民党内にも「民主党案の方が明確だ」と評価する声がある。

 政府・与党は「政府案がベスト。自公両党が長時間かけてまとめた案を修正
はしない」(幹部)としている。民主党は与党を揺さぶりながら、時間切れに
追い込む戦略と見られる。

 日教組 幼稚園から大学までの教職員で作る労働組合の連合体。1989年
に日本労働組合総連合会参加を巡り、反対勢力が現在の全日本教職員組合を結
成、分裂した。95年に文部省(当時)との協調路線に転じた。文部科学省の
調査(2005年10月現在)によると、組合員は約30万4000人。