『毎日新聞』2006年10月25日付 大学工学部:志望者10年で半減 来春大急ぎで組織改変へ 日本の科学技術を支える大学工学部が、存亡の危機に立たされている。志望 者がここ10年で半減し、下げ止まらないのだ。このため、東京電機大(東京 都千代田区)や早稲田大(新宿区)といった「名門」をはじめ、各地の工学部 が対応に乗り出した。その秘策は? 文部科学省の学校基本調査によると、95年は57万4000人いた工学部 志願者は、05年に33万2000人にまで減少。逆に医・歯・薬学部は同2 3万9000人から28万5000人に、看護・医療・保健学部も5万人から 11万人に倍増している。医療系学部は理学療法士などの資格が取れるため、 就職を見越した受験生が殺到する状況だ。 一方、工学部の不人気の理由としては、(1)資格取得に直接結び付かない (2)学問の内容が多岐にわたり、高校側が進路指導しにくいなどが考えられ るという。 この「不人気」に対して、関西大(大阪府吹田市)は工学部の募集を停止し、 「システム理工」「環境都市工」「化学生命工」の3学部に再編する。システ ム=仕組み作り▽環境都市=街づくり▽化学生命=モノ作り、というキャッチ フレーズでアピールする。土戸哲明工学部長は「ただの工学部というだけでは、 何を学ぶのか分かりにくかった。中高校生は理系に興味はあるが、志願者に結 びつかないのはそんな側面もあったのでは」という。 早稲田大も96年続いた理工学部を「基幹理工」「創造理工」「先進理工」 の3学部に再編。大学院も併設し一貫教育を強調する。柳澤政生教授は「時代 の変化への対応と受験生に魅力がアピールできる学部にすることが必要」と話 す。 東京電機大は、これまで工学部に入っていた建築や情報の学科を集めて「未 来科学部」を新設。同大は02年度には2万1000人の志願者がいたが、今 春は1万3000人にまで激減しており、「なんとか回復させたい」(同大) と必死だ。このほか、武蔵工業大(世田谷区)は従来の工学部に加え新たに 「知識工学部」を設けて情報関連に特化した教育を目指し、上智大(新宿区) も08年度理工学部を再編する予定だ。 河合塾の神戸悟教育研究部チーフは「受験生は就職を考えて医療系学部に集 まるが、資格を持っている人が多ければ就職に結び付かない恐れもある。科学 技術を背負うのは工学系なので、受験生も広い視野で進路を選択してほしい」 と話している。【澤圭一郎】 |