共同通信配信記事 2006年10月21日付

「現場追いつけぬ」85%
東大の公立小中校長調査


 「ゆとり教育」の見直しなど、政治主導で目まぐるしく提案される教育改革
について、全国の公立小中学校の校長を対象に聞いたところ、回答者の85%
が「速すぎて現場がついていけない」と感じていることが21日、東大の基礎
学力研究開発センターの調査で分かった。

 教育基本法改正案には66%が反対。「教育問題を政治化しすぎ」も67%
に達した。教育改革を最重要課題とする安倍晋三首相が教育再生会議を始動さ
せる中、格差拡大の懸念も大きく、現場に強い抵抗感があることが鮮明になっ
た。

 調査は同センターが7、8月に全国の公立小中学校の3分の1にあたる1万
800校の校長を対象に実施。約4800校の回答(一部は教頭らが回答)を
得た。

 「教育改革が速すぎて現場がついていけないと考えるか」との質問に「強く
思う」と答えたのは30%、「思う」は55%で、「思わない」「全く思わな
い」の計15%を大きく上回った。「教育改革は、学校が直面する問題に対応
していない」と答えたのも79%と圧倒的多数だった。

 中教審が教員の質確保のために導入を答申した教員免許の更新制は再生会議
でも重要テーマの一つ。だが、これに賛成する校長は41%止まりで、59%
が後ろ向きだった。

 学校選択制については「学校活性化に役立つ」との回答が62%ある一方で、
「一部で教員の士気が低下する」(73%)「学校の無意味なレッテル付けが
生じる」(88%)「学校間格差が拡大」(89%)と、マイナス面を心配す
る声が多かった。

 安倍首相らが再三口にする「学力低下」。だが20年前と比較して子どもの
学力が「下がった」とする校長は47%で「変わらない」「上がった」の計5
3%を下回った。

 一方、大多数の校長が心配を強めているのが将来の教育格差の問題。「子ど
も間の学力格差が広がる」とした回答が88%を占めたほか、「地域間」(8
4%)、「公立・私立間」(77%)といずれも格差の拡大を予測している。