『読売新聞』2006年10月20日付

研究者志望も実現は1割弱…行き場少ない数学エリート


 世界の数学好きの若者が競い合う「国際数学オリンピック」の予選を兼ねる
「日本数学オリンピック」の参加者の多くが、数学や物理学の研究者を志望し
ているが、実際に研究者になるのは1割にとどまっていることが、文部科学省
科学技術政策研究所のアンケート調査で分かった。

 アンケートは、1990年から昨年まで国内大会予選を通過した1063人
(14〜32歳)を対象に実施。うち296人から回答があった。

 五輪現役世代の中高生が就きたい職業の1位は「数学系研究者」(29・6
%)で、「医師」(24・1%)、「物理学系研究者」(11・1%)と続い
た。

 一方、出場経験のある社会人が就いている職業は、「民間企業や役所などの
事務職」が、22・0%でトップ。2位は「医師」(20・9%)、3位は
「情報処理技術者」(11・0%)。「数学系研究者」は6・6%、「物理学
系研究者」は4・4%にすぎなかった。

 理想と現実の格差の主因は、研究者ポストの不足にあるとみられる。アンケー
トによると、中学〜大学院生の65・4%が、研究職が難しくても「数学を生
かした職業に就きたい」と考えているのに、社会人で「数学を生かした職業に
就いている」と回答したのは47・8%。数学エリートたちを活用しきれてい
ない社会の現状がうかがえる。