時事通信配信記事 2006年10月17日付

バウチャー制度、今年度中に結論=文部科学省


 安倍政権が重要課題に掲げる教育改革の一環として、「教育バウチャー制度」
への関心が高まっている。学校間の競争により教育の質向上が見込めるとし、
かねて規制改革の議論などで導入の必要性が指摘されており、文部科学省は有
識者らを交えた研究会を設置し、研究・検討を進めている。今後は諸外国の事
例といったものも分析しながら、義務教育に導入した場合の効果・影響、義務
教育以外の分野への導入の可能性などについて幅広く検討し、2006年度中
に結論をまとめる方針だ。

 教育バウチャー制度は、子どもや親に学費などを直接補助・給付するような
仕組みを指すが、正式な定義は定まっていない。狭義では利用券を発行し、学
校施設に提出することで額面分の経済的補助を受けることができる制度から、
広義では個人を基準に支給される使途・譲渡制限のある補助金や給付金全般を
指す場合もある。いずれにせよ、同制度の導入で教育を受ける側が学校を選ぶ
ことが可能になり、学校間に競争原理が働くことで教育水準の向上を期待でき
るとされる。

 文科省の研究会のこれまでの調査結果によると、バウチャー制度は、米国の
一部の州などで導入されているが、それぞれの国の制度の導入背景はさまざま
で、制度そのもののとらえ方も一様ではない。米国の場合は、学校評価や学校
裁量の拡大、教員の質向上をはじめ一連の教育改革の中の1つの試みとして実
施され、低所得者の救済、宗教系の学校への補助を禁じる憲法上の制約の回避
などを目的としているという。

 日本でのバウチャー導入に関し、同研究会では「教育制度の根幹にかかわる
問題であり、慎重な議論が必要」「義務教育のように、すべての人が受けなけ
ればならないような分野ではバウチャーの導入意義が少ないのでは」「学校を
選択できることは良いが、選択を強制することは疑問」といった慎重な意見も
出ている。

 「教育を受ける側の選択肢の拡大は重要」とする一方で、「教育の機会均等
や教育水準の確保」が基本との立場。特に、義務教育段階でのバウチャー制度
導入に関しては、学校選択制の在り方なども含め、慎重に検討を進める考えだ。

 一方、同研究会では、義務教育以外の、幼稚園など就学前教育、音楽といっ
た専門分野に特化した教育、職業訓練などでバウチャー制度導入のメリットを
指摘する意見も出ている。高等教育分野でも、奨学金制度などは広義のバウ
チャーに当たるとの考え方もあり、幅広く検討を進めていく方針だ。(了)