『産経新聞』主張 2006年10月12日付

【主張】教育再生会議 抜本改革で脱戦後めざせ


 公教育の再生をめざす安倍晋三首相直属の諮問機関「教育再生会議」のメン
バーが決まった。ノーベル賞受賞者や財界の重鎮、元文部科学事務次官、中央
教育審議会の委員、スポーツコメンテーターら多彩な顔ぶれだ。

 極力、安倍カラーを抑えようとしたようにみえる。戦後教育のしがらみにと
らわれがちな国立大学教育学部などから1人も選ばれなかったことは、評価さ
れてよいだろう。

 会議には、安倍首相をはじめ、塩崎恭久官房長官、伊吹文明文科相が原則と
して出席し、山谷えり子首相補佐官が事務局長を務める。経済財政諮問会議と
似た位置づけだが、文科省や中教審の意向も、伊吹文科相らを通じて十分に反
映されるだろう。省益などにこだわらず、官邸主導による迅速な決定が望まれ
る。

 会議ではまず、学力向上や学校評価制、教員の質向上などの問題が協議され
る。来春には全国一斉学力テストが行われ、学校の自己評価も始まっている。
問題は、それらをいかに実効ある制度として機能させるかだ。各学校の学力水
準を比較・分析し、それを国の学校評価に生かす方法などが検討されることに
なろう。

 教員免許更新制についても、7月の中教審答申で、10年ごとに講習を受け
ないと免許が失効する仕組みを導入すべきだとする方向性が示されている。だ
が、それは指導力不足教員、いわゆる「問題教師」を教壇から排除することを
目的としたものではない。問題教師の排除を含めたドラスティックな制度改革
が必要である。

 安倍首相が掲げる大学の9月入学とそれまでの半年間の奉仕活動や、教育バ
ウチャー(利用券)制なども、真剣に検討してほしい。特に、奉仕活動は、小
渕恵三、森喜朗元首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」で提言されながら、
内閣法制局からブレーキがかかり、教育現場で徹底されなかった経緯があり、
重要な再検討課題だ。

 公教育の再生には、学力に加え、規範意識の育成も大切である。最近、小学
生が教師に手をかけたりする事件が増えている。大人と子供を対等に扱おうと
する誤った教育観の影響ともいえる。戦後教育のゆがみを正す役割を、教育再
生会議に期待したい。