時事通信配信記事 2006年10月11日付

「教育再生」官邸主導貫けるか


 安倍晋三首相が目玉政策に掲げる教育改革の具体策を検討する教育再生会議
が10日、発足した。「チーム安倍」が中心となり、官邸主導で教育改革を進
めるのが狙い。委員17人の顔触れも決まったが、文部科学省や与党内からは
「官邸だけで決めては困る」とけん制する声が出ている。

 「中央教育審議会(中教審)に任せていては、改革は実現しない」。首相周
辺には、文科相の諮問機関である中教審へのこうした強い対抗心がある。この
ため委員の人選はもっぱら「チーム安倍」の下村博文官房副長官と山谷えり子
首相補佐官が主導。山谷氏自身、実務を仕切る事務局長に就任した。これに対
し、同会議の設置を決めた10日の閣議で、伊吹文明文科相は「会議に積極的
に参画し、教育改革に取り組んでいきたい」と、改革論議に積極的に関与する
意向を示した。

 同省は首相が唱える大学への9月入学導入や、学校の自由選択を可能にする
「教育バウチャー制度」に慎重な立場だ。伊吹文科相は9月の就任会見でも
「教育改革の実務は中教審にお願いする」と言い切っている。

 官邸主導に警戒感を強めるのは公明党も同じ。再生会議には委員のほか、同
党の池坊保子文科副大臣も出席することになった。これには、官邸に常駐する
議員がいない公明党が同会議への関与を強く求めて実現した経緯がある。

 もっとも、メンバーのうち野依良治座長と中嶋嶺雄氏は中教審委員を兼務し
ており、独立行政法人日本学術振興会理事長の小野元之氏は文科事務次官経験
者だ。文科省内には「どこまで官邸主導を貫けるかお手並み拝見」(幹部)と
冷ややかな見方もある。官邸機能強化を目指す首相は、改革案策定をめぐって
指導力を問われることになりそうだ。(了)