『毎日新聞』2006年10月7日付

教育基本法改正:現実に即した改革を−−伊吹文明・文科相に聞く


 −−教育基本法改正についてのお考えは。

 ◆現行法自体は立派な法律だと思いますよ。しかし、日本には日本の文化、
伝統があり、祖先が積み上げてきた社会規範があった。例えば「世間様に顔向
けできないことはしちゃいけないよ」とね。こういうものが現行法には薄いん
じゃないですかね。だから(社会規範などを)加えて出した改正案ですから、
できるだけ早く成立させる。

 −−成立時期は。

 ◆前の国会で50時間審議しています。この程度のボリュームの法案だと、
審議は70〜80時間やれば十分なんだよね。

 −−自民党内に修正論が出ています。

 ◆内閣が閣議決定をして法律を出した。だから、(現在は)内閣の一員であ
る私は修正するつもりは毛頭ありません。あまり早々と(修正論を)言われる
というのは困るんだな。

 −−首相が掲げた個別の教育改革については。

 ◆教育基本法を成立させても仏ができるだけで、魂を入れなくちゃいけない。
個別の教育改革によって、魂が入っていくということだと思う。しかし、バウ
チャー(教育利用券)制度をやった場合、憲法に規定される平等に教育を受け
られる権利とのバランスを考えなければいけません。大学の9月入学も実社会
と合わなければ仕方ない。現実の問題点を検討するのは当然でしょうね。

 −−設置予定の教育再生会議と中央教育審議会と衝突や対立も予想されます。

 ◆衝突するようなことが出てこないような姿勢で臨むということでしょうね。
経済財政諮問会議が大きな枠組みを作って、財務省や経済産業省がおのおの行
政をやっていく。安倍晋三首相にはこういうやり方でやっていこうと話しまし
た。政治的に何をすべきかを(教育再生会議で)作っていただき、それを中教
審でこなしていくということじゃないでしょうかね。

 −−科学技術の施策へのお考えは。

 ◆成長の源はイノベーション、新たな技術なんですね。科学技術の研究を潤
沢に、多様に進めていく。どうすれば効率的に最小限の税金でやっていけるか
を考えていくことが一番大切な視点だと思いますね。