共同通信配信記事 2006年10月2日付

議事録不存在と誤り放置 国に40万円賠償命じる


 国立大病院改革をめぐり、元東大医学部教授の柴田洋一さん(63)が改革
への提言をまとめた会議の議事録開示を請求した際、文部科学省の不当な関与
を隠すため「不存在」と虚偽を回答したとして、国などに120万円の損害賠
償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は2日、請求を一部認め、国などに計40
万円の支払いを命じた。

 荒井勉裁判長は「議事録を見ると、文科省の意図が提言に一定程度反映され、
開示を避けたいと考えていたことがうかがわれる」と認定。その上で「隠した
証拠はないものの、不存在という誤りの回答を是正せず、放置した重大な過失
がある」と判断した。

 判決によると、議事録は国立大学医学部付属病院長会議が2002年に提言
をまとめた際の記録で、柴田さんは翌年1月に文科省などに開示請求したが
「不存在」を理由に不開示とされた。

 同年4月に議事録の存在が報道され、柴田さんの元へ議事録が突然送付され
たが、不開示決定を取り消したのは約2カ月後だった。

 訴訟で国側は「職員の記憶から議事録が欠落していた」と主張したが、荒井
裁判長は「到底信用できない」と退けた。

 提言への文科省の関与や議事録の存在は国会でも問題となり、政府は野党の
質問主意書に「関与していない。議事録も存在しない」と答弁。議事録の存在
が分かり、文部科学事務次官らが処分されている。

 文科省医学教育課は「判決内容を精査中でコメントできないが、提言に文科
省が関与していないという立場は変わらない」と話している。