『高知新聞』2006年10月4日付

女子大改革で溝くっきり 県議会委に学長出席


 高知女子大学(青山英康学長)の学部再編や男女共学化を含む県立大学改革
で県議会は、執行部が9月定例会に提出している関連の補正予算案は可決する
ものの、改革基本計画の承認は見送る見通しとなった。青山学長の出席を求め
て審査した3日の企画建設委員会(東川正弘委員長)でも、改革の方向をめぐ
る女子大側と県側の考えになお大きな隔たりがある状況を憂慮。最大会派の自
民党は同日の議員総会で「承認見送り」の方針を確認、他会派も歩調を合わせ
るとみられる。関連予算は改革の方向に見合うとして4日に委員会採決し、賛
成多数で可決される見通し。

 執行部は、共学化や法務総合学部の新設などを盛り込んだ女子大再編の基本
計画を今定例会開会直前に公表。池地区へのキャンパス統合に伴う施設設計委
託料などの関連予算も提出しており、県議会には基本計画承認と予算案可決を
一体的に求めている。

 同日の企画建設委では青山学長と県企画振興部が同席。双方の考えをただし
たが、法務総合学部新設や男女共学化で依然として溝が埋まらないまま。この
ため委員会は別途協議の場を設けて溝を埋めるよう双方に要請した。

 自民党は審査後の議員総会で、「看護や保健福祉の強化を目指すという大枠
の方向性は県と大学で一致している」(結城健輔会長)として予算案を可決す
る方針を確認。しかし基本計画全体の承認には「法務総合学部の学生確保など
に不安がある」「設置者の県と大学の認識が違う中で今後の運営は大丈夫か」
などと疑問視する意見があり、予算案と切り離した対応が妥当と判断した。

 県政会、新21県政会、公明党も予算案可決には応じるが、基本計画承認に
は慎重な姿勢。共産党と緑心会は関連予算の減額修正案を提出する構えで、県
民クラブは予算執行を凍結する付帯決議の提出も視野に検討する。

 「県が大学改革を進める側、大学は改革させられる側なんでしょうか?」―
3日の県議会企画建設委員会(東川正弘委員長)で高知女子大の青山英康学長
が大学改革について持論を展開。共学化などで執行部側との考えの相違があら
ためて浮き彫りになった。

 学長を招いた背景は、「共学化」や「法務総合学部」など県立大学改革をめ
ぐる県と大学の意見の不一致。この日は東川委員長がまず「(学長を呼んだの
は)前例のない異常な事態が発端。消化不良の状態で改革ができるだろうか」
と厳しい口調で“学長招致”の理由を説明した。

 発言に立った同学長は冒頭、橋本大二郎知事が記者会見で「(学長は)言わ
れることが変わる」と発言したことに「公人である知事が公人である学長を一
方的に非難するのは社会的正義を欠く」と、不満を表明。さらに「改革は大学
が自主的に行うべき。大学は改革させられる側なのか」と、改革を進める県へ
の不信感を強調した。

 県の基本計画についても「看護学部などの取り組みは、大学がこれまで改革
してきたことをつまみ食いしているだけ」と批判。共学化では「歴史と伝統を
持った高知女子大の名前を捨てて大学間競争は戦えない」「大学院や単位互換
制で男子学生を受け入れており、共学の実質化は進めている」と主張した。

 執行部も時折反論したものの、学長との議論はかみ合わないまま。溝の深さ
だけが目立った格好となった。学長と執行部の“直接対決”とあって、この日
の委員会室には記者やテレビカメラがずらり。約2時間、討議を見守った。