時事通信配信記事 2006年9月28日付

基本法成立が至上命令=安倍政権誕生で文科省


 「教育改革」を重要課題の1つに掲げ発足した安倍内閣。「教育の再生」を
担う文部科学相には、派閥の会長でもあるベテランの伊吹文明氏が起用された。

 臨時国会での文科省の「至上命令」は、教育基本法改正案の成立。前国会で
は衆院特別委員会で、既に約50時間程度の審議が行われているが、伊吹文科
相は「普通この程度のボリューム(の法案)だと70〜80時間やれば十分」
との見解を示しており、「早く国会の審議をお願いしたい」と期待感を語った。

 しかし、1947年の制定以来、一度も改正されていない同法をめぐっては、
民主党も対案を提出しており、臨時国会の審議でも激しい議論が予想される。
12月15日の会期末まで、全省一丸となった取り組みを進める考えだ。

 新内閣の動向で同省が強い関心を示しているのは、安倍晋三新首相が打ち出
した「教育再生会議」。また、教育再生担当の補佐官に山谷えり子参院議員が
就任し、同会議や補佐官と同省の「住み分け」も課題になりそうだ。

 これに対し伊吹文科相は、「各省にまたがるものも教育の中に多いので、
(同会議の設置は)当然結構なこと」と語る。経済財政諮問会議と各省との関
係をなぞらえ、「(政治主導の同会議が決める)大きな方向性に従って、各省
が仕事をする」と明快だ。ただ、実際の政策決定の段階になれば、調整が必要
となることも予想され、文科相のかじ取りに注目が集まる。

 このほか、安倍首相が提唱する「大学9月入学」や自由な学校選択を可能に
するための「教育バウチャー制度」などの検討も求められる。「現在の教育現
場で行われていることに、ある種の物足りなさを感じているからこういう提案
が起こってくる」と伊吹文科相。これらの課題には「文科省として謙虚に検討
する」方針だ。

 ただ、「抗がん剤を飲まして、がんは治ったけれど副作用で死んでしまった
ら困る」とも。新たな提案が行き過ぎた教育改革につながり、「副作用」が発
生するようなことになれば、「私から総理に話す」と強気の姿勢。バランスの
取れた教育改革の実現に向け、意欲をみなぎらせている。(了)