声明


 本日、東京地方裁判所民事第36部(難波裁判長)は、都立学校の教職員ら
が原告となって、東京都と都教育委員会(都教委)を被告として、国歌斉唱義
務不存在確認等と損害賠償を求めた訴訟(いわゆる「予防訴訟」)について、
原告らの訴えを全面的に認め、10・23通達を違法とし、(1)原告らに卒
業式等における国歌斉唱の際に、起立・斉唱・ピアノ伴奏の義務がないことを
確認し、(2)起立・斉唱・ピアノ伴奏をしないことを理由にいかなる処分も
してはならないとし、(3)10・23通達によって原告らが被った精神的損
害に対する慰謝料の支払いを命ずる、極めて画期的な判決を言い渡した。

 本件は、都教委が2003年10月23日付けで、卒業式、入学式等の学校
行事において、都職員に対し「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」こと
を命じ、それに違反した場合は、懲戒処分を科すとした全国的にみても異常と
もいえる「国旗・国歌」を事実上強制する通達(「10・23通達)を出した
ことに起因する。原告ら教職員は、教育現場での「国旗・国歌」の一律の強制
は、教職員一人一人の思想・良心の自由、教育の自由等を侵害することになる
とともに、生徒の思想、良心の自由をも侵害することになるとの思いから提訴
に至ったのである。

 判決は、義務不存在確認請求、処分差止請求に訴えの利益が認められること
を前提に、10・23通達の内容が、過去の歴史的事実から、国民の間にさま
ざまな見解が存する「日の丸・君が代」を教職員に対して一律に職務命令や懲
戒処分等の手段をもって強制するものであって、憲法19条の保障する思想・
良心の自由を侵害するものであると明確に判示した。

 また、都教委による10・23通達とその後の校長らに対する指導名目の締
め付けが、卒業式や入学式について、各学校の現場における創造的かつ弾力的
な教育の余地を残さないものであることなどを理由に、教育基本法10条1項
で禁止される「不当な支配」にあたるとした。さらに、都教委の「不当な支配」
の下で裁量の余地なく出された校長の職務命令は、教職員の思想・良心の自由
を侵害する「重大かつ明白な瑕疵」があり、違法なものであることを認めた。

 今回の判決は、憲法で保障された思想・良心の自由の重要性を正面からうた
いあげたもので、わが国の憲法訴訟上、画期的なものである。

 また、判決は、今まさに改悪の危機にさらされている現行教育基本法の趣旨
を正しくとらえ、行政権力による教育への不当・不要な介入を厳に戒めたもの
であり、教育基本法改悪の流れにも強く歯止めをかけるものといえる。

 都教委は、判決に従い、違法な10・23通達を直ちに撤回し、教育現場で
の「日の丸・君が代」の強制をやめるとともに、生徒や教職員の自主性、教育
の自由を侵害するような教育政策を直ちに改めなければならない。

 この判決を機会に、われわれの訴えに対し、国民の皆様のご支援をぜひとも
いただきたく、広く呼びかける次第である。

2006(平成18)年9月21日
            国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟原告団・弁護団
            「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会