共同通信配信記事 2006年9月16日付

英語、音楽も「伝統重視」 指導要領改定で中教審


 授業内容や教科書づくりの基準になる学習指導要領の見直し作業を進める中
教審の教育課程部会は、国語、歴史だけでなく英語、音楽などの教科でもこれ
まで以上に日本の伝統・文化を重視する方針を素案で示し、本格的な検討に入っ
た。

 素案には「ふじ山」「こいのぼり」などで知られる文部省唱歌の指導を充実
させ、「国や郷土について理解を深め、英語で積極的に発信する」など具体的
な指導内容も記載。26日からの臨時国会では「愛国心」を盛り込んだ教育基
本法の改正案が審議されるが、その議論を先取りする内容ともいえそうだ。

 指導要領の見直しは「ゆとり教育」が学力低下を招いたとの批判に対し、基
礎的学習の充実などを主要なテーマに昨年スタート。本年度中の改定を目標に
している。

 伝統文化の重視は、現行指導要領(1998年改定)でも「わが国の歴史や
伝統を大切にし、国を愛する心情を育てる」(小学社会)などと各教科で記載。
今回の素案は基本的にこの流れを踏襲しているが、社会など複数の教科で「一
層の重視」との表現を使い、従来の姿勢をさらに強調しているのが特徴だ。

 教科によっては「古文、漢文の音読・暗唱」(小学国語)や「昔ながらの町
並みや建造物の学習」(小学社会)など具体的な指導内容も例示。ゆとり教育
の象徴である総合学習でも「地域の文化や伝統」を指導例に加えることが検討
議題に上っている。

 一連の「伝統重視」は教育課程部会が2月にまとめた審議経過報告にはほと
んど見られなかったが、その後教科ごとの審議で取り上げられるようになった。
現在は指導要領見直しの議論全体でも主要なテーマの一つだ。

 文部科学省の幹部の1人は「伝統文化や古典に親しむ態度を養う点が各所で
強調されるようになったのは基本法改正を見据えた動き」と言う。

 「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛するとと
もに…態度を養うこと」との文言を盛り込んだ教育基本法改正案は、先の通常
国会で継続審議となり、与党側は臨時国会での成立を目指している。