『産経新聞』主張 2006年9月17日付

【主張】教育改革と総裁選 基本法改正の中身を語れ


 自民党総裁選で、教育改革をめぐる論議も注目を集めている。安倍晋三官房
長官は学校評価制度や教員免許更新制などの導入を主張している。谷垣禎一財
務相は漢字や九九などの基礎学力向上を強調し、麻生太郎外相は義務教育の1、
2年前倒しを訴えている。

 それぞれ有意義な主張であるが、肝心の教育基本法改正に向けた論議が今ひ
とつ、盛り上がりに欠ける。

 安倍氏は秋の臨時国会で教育基本法改正の成立に最優先で取り組む考えを示
し、麻生氏も「改憲の前に教育基本法を改正することだ」と語っているが、そ
の中身を明らかにしていない。谷垣氏は教育基本法改正問題にほとんど触れて
いない。

 先の通常国会で、政府案と野党の民主党案が示された。政府案は自民・公明
両党の合意に基づき、「国と郷土を愛する態度」などの育成をうたっている。
民主党案は「日本を愛する心」と「宗教的感性」の涵養(かんよう)を盛り込
んだ。衆院で5月から論戦が始まったが、審議日数が足りず、いずれも継続審
議となった。さらに、超党派の議員連盟も独自の法案を発表している。

 秋の臨時国会で、これらの法案をどのように調整して審議を進めていくのか。
与野党の協議は開かれるのか。そうした道筋も含めて、各候補はもっと具体的
に語るべきである。

 昨今、子供の学力低下に加え、親による幼児虐待や子供が親を殺害するとい
うおぞましい事件が相次いでいる。13日に発表された文部科学省の調査では、
小学生が先生に暴力を振るう校内暴力が急増している。

 14日、自民党青年局主催の公開討論会で、安倍氏は「初等教育の段階で父
母を尊敬すること、祖父母を大切にすることをしっかり教えるという原点に戻
る必要がある」と指摘した。谷垣氏は「地域社会が参加して自分たちの小学校
を支援する必要がある」と述べ、麻生氏は「しつけはなるべく早い方がいい。
家庭に期待できないなら、学校で補うべきだ」と話した。さらに本格論戦を期
待したい。

 教育改革は小泉内閣が積み残した大きな課題だ。戦後教育の歪(ゆが)みを
正し、新しい国づくりのためには、健全な国家意識や家族観をはぐくむ方向で
の教育基本法改正が急務である。