『京都新聞』2006年9月13日付

知財活用に学外組織
京大医学研究科 設立へ検討開始


 京都大医学研究科は12日までに、医学分野の知的財産(知財)を管理活用
する学外組織を設立するための検討を始めた。臨床応用までの長期的な知財管
理と専門知識を有するスタッフの確保が狙い。全学での議論を踏まえて方針を
決める。

 芝蘭会館(京都市左京区)で12日開かれた京大医学領域産学連携シンポジ
ウムで、京大「医学領域」産学連携推進機構(KUMBL)副機構長の寺西豊
教授が報告した。

 京大医学研究科や再生医科学研究所などの医学分野については、KUMBL
が知財の発掘や権利化、情報発信、産学交流と研究促進、ライセンシングなど
を進めている。英文契約など専門知識を有する専任スタッフを配置、大学院で
の専門職養成も進めている。

 京大は文部科学省の「スーパー産学官連携本部」に2007年度までの期限
付きで選定され、KUMBLの事業も人的、財政的に支えられてきた。しかし、
08年度以降は未定で、国立大学法人では学内で新たな人員確保が難しいこと
などから、学外組織を検討することにした。

 組織の形態としては、今年から設立できるようになったLLC(合同会社)
などを想定している。LLCならば、出資比率にかかわらず経営権を保持でき、
企業の出資を受け入れても研究者の独自性を維持できるからだ。大学からは知
財を出資し利益を受け取る考えだが、現状では国立大学法人からの出資先はT
LO(技術移転機構)に限定されているため、今後の文科省の方針を見ながら、
実際に設置できるかどうか細部を詰める。

 寺西教授は「医学分野の知財の実用化には、長期の治験などを支える基盤を
強固にしないといけない。大学の単年度会計では難しい」と指摘、「知財の専
門職も、人材として評価されていない。信頼できる学外組織をつくることが必
要ではないか」と話している。