『東京新聞』2006年9月5日付

公共サービス市場化テスト
年内に9事業入札


 政府は五日、公共サービスの担い手を官庁と民間の競争入札で決める市場化
テストの基本方針を閣議決定した。国民年金の保険料徴収や管理職経験者の再
就職支援など九事業を対象とし、今年中に入札を開始。二〇〇七年四月から事
業が順次始まり、国民へのサービスを官民が競い合う体制が本格スタートする。

 「お役所仕事」に、民間企業を参入させることにより、サービス向上や事業
の効率化を進めるのが新制度の狙い。政府は年内にも対象事業を追加し、民間
の参入機会を広げる考えだ。

 「官から民へ」を看板に掲げる小泉政権は、〇五年度から民間だけの入札で
事業者を決めるモデル事業を実施。今年五月に公共サービス改革法(市場化テ
スト法)が成立したことから、官庁を交えた競争入札に踏み切ることにした。

 年金保険料の徴収は、社会保険庁と民間が未納者からの徴収を増やすための
提案や、徴収のための費用試算を示して競い合う。再就職支援は、管理職や専
門技術者に職業紹介する「人材銀行」やセミナー事業が対象。若者向けの職業
体験事業、総務省の統計調査、登記業務なども入札する。

 人材派遣会社やシンクタンクなどが入札に参加する可能性がある。ただ官庁
側は「準備の時間が足りない」などの理由で入札を見送るケースもありそうだ。

 基本方針では、事業を落札した企業が下請けに一括して再委託する「丸投げ」
は禁止。民間が落札した事業に携わっていた国家公務員は、他の業務に配置転
換する。地方自治体にも市場化テストの導入を促す。

 政府は入札で事業計画や費用を比べる。対象事業には、達成の度合いがはっ
きり分かる数値目標などの目安を設ける。入札で決まった事業者については、
仕事の質などを事後的に点検する。