『毎日新聞』大阪夕刊 2006年9月2日付

奨学金:採否に格差 割当率は東京44%、大阪21%


 日本学生支援機構(旧日本育英会)が大学、短大生らに無利子貸与する奨学
金で、貸与基準を満たした07年度分の申込者(適格者)のうち、実際に貸与
を受けられる予定者の割合(割当率)は、都道府県によって約2倍の格差があ
ることが分かった。貸与を受けられる人数(割当数)は、都道府県別に決めら
れており、基準を満たしながら居住地によって採否に大きな差が出ているため、
採用方法の変更などを求める声が上がっている。

 大阪府立高校の教員らでつくる「府立学校人権教育研究会」が情報公開請求
などで入手した資料で分かった。

 同機構などによると、割当数は、▽65%を全高校生徒数▽15%を過去の
適格者数実績▽10%を県民所得▽10%を進学率−−に基づき決定。そのう
えで申込者の成績、家計所得、人物評価を点数化し、高い順に採用する。

 その結果、来年度の割当率は、最高の東京都(44・5%)や、神奈川、富
山、山口、山梨の各県が40%を超える一方、最低の大阪府(21・2%)や
沖縄、宮崎両県が21%台と低かった。

 申込者数は05年度の8万3316人から07年度は11万4097人に急
増。経済的な理由が原因とみられ、大阪府は07年度の適格者数が全国最多の
9125人だった。しかし、全国の割当数は1149人増えただけで、平均割
当率も9・6ポイント減少し、29・8%になった。

 適格者21人のうち1人しか採用されなかった大阪府立高の関係者は「進学
を迷う生徒もいて問題だ」と話し、研究会は「適格者を全員採用できないなら、
都道府県の枠をなくし、点数の高い生徒から採用するのが公平だ」と訴えてい
る。【花岡洋二】

 ◇見直し含め検討−−日本学生支援機構の話
 同じ成績、家計レベルの学生でも、採否結果に違いが生じている面があるこ
とは事実で、課題として認識している。選考方法や割当数の算出方法の見直し
も含め、より適切な運営について検討を行う。

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 ◇07年度予定の奨学金◇(大検合格者は除く)
都道府県 適格者数  割当数  割当率(%)
東京   4337  1928 44.5
神奈川  3428  1475 43.0
富山    861   367 42.6
山口   1004   423 42.1
山梨    947   379 40.0
香川    890   353 39.7
愛知   3733  1478 39.6
滋賀   1060   413 39.0
岐阜   1687   604 35.8
埼玉   3718  1328 35.7
千葉   3424  1217 35.5
和歌山  1078   381 35.3
福井    995   350 35.2
鳥取    902   316 35.0
茨城   2172   749 34.5
奈良   1358   462 34.0
静岡   2813   950 33.8
三重   1676   552 32.9
京都   2227   732 32.9
高知   1040   325 31.3
群馬   1966   612 31.1
宮城   2206   685 31.1
徳島   1064   329 30.9
栃木   2164   647 29.9
石川   1263   374 29.6
熊本   2036   598 29.4
新潟   2873   839 29.2
長野   2170   633 29.2
島根   1279   373 29.2
秋田   1490   422 28.3
愛媛   1995   553 27.7
兵庫   4690  1298 27.7
岡山   2234   616 27.6
佐賀   1457   400 27.5
山形   1715   461 26.9
福島   2613   699 26.8
岩手   2064   543 26.3
青森   2107   540 25.6
大分   2339   577 24.7
北海道  5762  1421 24.7
鹿児島  3131   751 24.0
広島   3379   808 23.9
福岡   5793  1371 23.7
長崎   2570   593 23.1
宮崎   2534   542 21.4
沖縄   2728   580 21.3
大阪   9125  1937 21.2
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計  114097 33984 29.8