『産経新聞』2006年8月31日付 国公立大学の入学時期、9月を検討 安倍官房長官 安倍晋三官房長官は30日、政権構想の柱となる「教育再生」の一環として、 国公立大学の入学時期を9月に変更し、高校卒業から大学入学までの間に社会 奉仕活動を義務付ける改革案の検討を始めた。安倍氏は子供の学力向上だけで なく、教育を通じたモラルの回復が不可欠だとみて、こうした改革が必要と判 断。首相直属で設置する「教育改革推進会議」(仮称)で、具体案を取りまと める。 安倍氏は9月1日に発表する政権構想で、「教育再生」を憲法改正と並ぶ柱 に据える方針。政権構想では改革の詳細案を明示しないが、政策論争を通じて 入学時期変更の必要性を問題提起する構えだ。 大学入学の時期は各大学が決定しており、強制的に9月に変更するには学校 教育法などの改正が必要になる。また、4月が新年度の開始となる社会的な慣 習とずれることや、本来ボランティアである社会奉仕活動の義務化には抵抗も 予想される。安倍氏は「法改正も検討している」(周辺)とされるが、教育改 革推進会議の場で有識者と検討を進める考えだ。 安倍氏は近著で「みんなが助け合いながら共生する社会をつくりあげるため には、たとえ最初は強制であっても、まず若者にそうした機会を与えることは 大きな意味があるのではないか」と強調。社会奉仕活動を教育の一環として行 うことでモラルの改善に役立つとの認識を示している。また、入学時期を欧米 と同じ9月に変更すれば、海外留学の促進にもつながる。 大学の入学時期をめぐっては平成12年、森喜朗首相(当時)の私的諮問機 関「教育改革国民会議」がまとめた最終報告で、「9月入学を推進する」と提 言。筑波大や早大など一部の国公立大、私大では秋季入学を実施している。 安倍氏はこのほか、学力向上策として、教員の免許更新制度の導入や民間人 の積極的な登用、学校の管理運営や生徒指導の状況などを第三者機関が評価す る「学校評価制度」などを提唱している。こうした改革案も改革推進会議で検 討する見通しだ。 |