『読売新聞』2006年8月25日付

大阪府、官民競争入札「市場化テスト」導入を断念

 ◆職員「職場失う…」事業選定断念

 大阪府が、府と民間が対等に公共サービスを競争入札する「市場化テスト」
導入を断念した。太田房江知事が2004年秋改定の行財政計画で掲げた目玉
事業の一つだったが、民間が落札した場合、府職員は職場を失ってしまうこと
などから対象事業を決められず、「官民ガチンコ対決」から府側が逃げ出した
格好だ。

 太田知事は04年9月、民間の経営感覚などを取り入れるとして、「PPP
(パブリック・プライベート・パートナーシップ=官民協力)改革」を表明。
外部委託の推進とは別に、官と民が入札で「価格」と「質」を競い合う市場化
テストの導入を掲げた。

 しかし、候補に挙がった徴税業務は「法令上、公務員に限定される」として
除外。自動車税の納税証明書発行についても、銀行などで収納されるケースが
ほとんどのため「効果が薄い」として見送るなど、対象事業の絞り込み作業が
難航。今年7月には「公共サービス改革法(市場化テスト法)」が施行され、
自治体の工夫で幅広い事業で市場化テストを導入できることになったが、府内
部では「府側が落札できず、突然職場を失った職員はどうなるのか」などの声
も上がり、結局、具体的な事業を選定できなかった。

 太田知事は「競争するよりも、民間とよく協議して提案を受け、委託した方
が長続きする」と釈明するが、府行財政改革有識者会議座長の斉藤慎・大阪大
大学院教授(地方財政論)は「府が民間に負ければ、府の仕事が減るだけに、
部局の抵抗は強いだろう。実現できるかどうかは、トップの決断力次第」と話
す。

 市場化テストを巡っては、和歌山県が全国の自治体に先駆けて導入を決定、
新築中の県庁南別館の管理運営業務について11月、県管財課と民間事業者に
よる競争入札を行う。県行政経営改革室は「新規事業なので実施できるめどが
立った。どちらが落札しても、経費節減につながるはず」としている。