『朝日新聞』2006年8月24日付

山形大医学部、定年医師を再教育 過疎地の医師確保に


 山形大学医学部(嘉山孝正学部長)は24日、公立病院などを定年退職した
専門医師らに医療全般の知識を再教育し、地域医療を担ってもらう「リフレッ
シュ事業」に来年度から乗り出すと発表した。国や自治体は地域の医師不足を
解消するために様々な対策を講じてきたが、大きな成果を上げていないのが現
状だ。同大によると、ベテラン医師を再教育して地域に送り出す取り組みは全
国でも例がないという。

 再就職を希望する医師はドクターバンクに登録する。再教育を受けたうえで
希望するへき地が紹介される。再教育は2カ月から1年までの数コースを用意。
特定の分野で医療に携わってきた医師に幅広い知識を教える。同大医学部の教
員が指導にあたり、講義のほか、実際の診療も体験する。

 再就職を希望する医師や受け入れ側の医療機関はいずれも全国規模で募る。
派遣先は公立病院だけでなく、民間も含めて医師不足に悩む医療機関すべてが
対象だ。

 公立病院のほとんどは65歳が定年だが、経験豊富でモチベーションが高く、
地域医療の即戦力になると期待される。また、出産を終えて職場復帰する女性
医師を支援する目的もある。

 事業は来年度から5カ年計画。07年度分として約3億円を文部科学省に概
算要求する。5年間の要求額は約12億円。同大によると、5年間で150人
の一般医が新たに誕生する見込みという。

 再教育を受けても地域の医療機関に再就職する医師には不安がつきまとう恐
れがある。このため、同大医学部付属病院と県内の医療機関を結ぶITネット
ワークを構築し、支援する考えだ。両者を衛星回線で結ぶことで、各病院は付
属病院から診療アドバイスや手術の技術指導を受けられる。ITネットワーク
は県内を対象とした取り組みだが、国は「全国展開できれば」と期待する。