『西日本新聞』2006年8月23日付

九大・六本松 伊都に直接移転へ 箱崎地区経由せず 文科省、新案を了承


 九州大のキャンパス移転問題で、文部科学省は22日、同大が提案していた
六本松キャンパス(福岡市中央区)を、2005年に開校した伊都キャンパス
(同市西区など)に直接移転する新移転計画案を了承した。同大は売却予定の
六本松地区と同市城南区の寮の土地を担保に、金融機関から融資を受け、伊都
地区の施設整備費に充てる。

 同大は07年度政府予算の概算要求に、直接移転に伴い施設建設地として必
要となる伊都地区の土地購入費約56億円を盛り込むよう求めており、認めら
れれば同年度中に着工。08年度までに校舎などを整備する。09年4月から、
六本松地区の全学生(1、2年)と、教職員の計約4300人が伊都地区に移
る。借入金返済は土地の売却益で賄う。箱崎地区を含めた移転の完了は、現行
計画と同様、19年度を予定している。

 同大はこれまで、伊都地区での施設建設費について国の予算化が当面見込め
ないことなどから、六本松地区をいったん箱崎キャンパス(同市東区)に移転
し伊都地区に移す計画を策定していた。

 しかし、独立行政法人化した国立大に対し、国は05年度から、大学の土地
を担保にした長期借入金で施設建設費を確保する手法を容認。さらに、新計画
は現行計画に比べて引っ越し回数が減り約15億円の経費削減につながること
から同大が六本松地区の直接移転を検討。同省と協議を進めていた。09年度
には伊都キャンパスに学生、教職員約8600人が通うことになるため、同省
は「伊都地区の地域活性化にもつながる」(国立大学法人支援課)としている。

■資金自己調達増す経営責任

 九州大の六本松キャンパス直接移転を文部科学省が認めたことで、同大の移
転事業が本格化する見通しとなった。ただ同省が「国の財政負担の軽減になる」
とする自己調達資金による移転は、法人化した同大の経営責任が増すことを意
味する。

 九大移転については長年、移転費用を負担する国の財政難などから、計画完
了を疑問視する声もあった。しかし、大学が土地を担保に融資を受けて施設整
備する手法を国が容認。地下鉄沿線で福岡市中心部に近い六本松キャンパスの
地価が持ち直す追い風もあり、状況は好転。近くの寮も含めると土地売却費は
約150億円と見込まれるといい、同省は直接移転にかかる施設整備費用が賄
えると最終的に判断した。

 六本松跡地利用については、福岡高裁など法曹界が集まる「司法エリア」、
マンションなどの住宅、商業施設を軸とする福岡市が中心となった案が有力視
されており、同大幹部は土地売却に自信をみせる。ただ、具体的な計画策定は
これから。マンション建設を望まない住民もいる。

 住民の意向も踏まえつつ、土地を確実に処分できる計画をどう策定するか。
移転の円滑な実施には「土地をいかに高く売るかが鍵」(同大職員)だけに、
跡地利用計画を魅力あるものにできるか、法人化した同大の経営努力が強く求
められる。 (社会部・田中伸幸)