『中国新聞』2006年8月17日付

医師不足対策 医学生に奨学金


 「不足する医師を医学生の段階から確保しておこう」と、広島、山口、島根、
鳥取の四県が本年度、医学生らを対象に奨学金制度や修学資金の貸付制度を新
設した。いずれも一定期間、県内か指定医療機関で勤務すれば返済を免除する
仕組み。二〇〇四年度の新しい臨床研修制度導入で進路の自由度が増し、県外
流出が加速したことなどが背景にある。岡山県も、県内勤務などを希望する医
学生らに求人情報などをメール配信するサービスを始めた。

 広島県の奨学金制度は、県指定の中山間地域の公的医療機関への勤務が条件
になる。医師不足が顕著な産科、小児科、麻酔科の専門医師や、総合医師を目
指す医学生が対象。月額二十万円で、中四国地方の大学に案内を出し、二人が
決まった。

 山口県は、県内の公的医療機関での就業を希望する医学生を対象に、修学資
金の貸付制度を創設し、九月八日を期限に募集を始めた。不足が深刻な小児科、
産婦人科、麻酔科の医師確保につなげる狙い。対象は、山口大医学部の学生と
県内高校出身の医学生で学年は問わない。枠は五人。卒業まで月十五万円を無
利子で貸す。

 島根県は島根大医学部と連携し、二種類の奨学金制度を創設した。県内の過
疎地域出身者を対象にした地域枠推薦入学者への奨学金と、初期臨床研修後、
県内勤務の意思がある医学生への特別奨学金。推薦入学者への奨学金は月額十
万円で、入学金約二十八万円も貸与する。特別奨学金は年百五十万円で二年間
が限度。二つの奨学金を計七人が受けている。

 鳥取県も鳥取大医学部との連携で月額十二万円の奨学金制度を設け、五人が
対象になっている。

 四県の制度とも一定期間の県内勤務などを条件に返済を免除する。広島県の
制度は、奨学金の受給と同じ期間、県が指定する医療機関での勤務が必要。山
口県は卒業後一年以内に免許を取得し、県市町立病院などで小児科、産婦人科、
麻酔科の医師として貸付期間の一・五倍を超える期間勤めることを求めている。

 一方、岡山県と県医師会などのサービスは、医師会のホームページに登録し
た医学生や医師に、求人、へき地医療、臨床研修などの情報を無料で配信する
仕組み。県保健福祉部施設指導課は「医師側はタイムリーな情報把握、病院側
は人材確保につながる」と双方のメリットを強調する。