『東京大学新聞』 2006年7月25日付

運営費交付金 減額期間2年延長に
石堂副理事 「経費削減と寄付で対応」
次5年で500億減

 政府は7日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)
2006」を閣議決定し、国立大学に支給する運営費交付金を、10〜11年度も前年
度比1%で削減することを決めた。04年には、04年度の交付額を基準として、
05〜09年度にそれぞれ前年度比1%で削減することが決定しており、2年間の削
減期間延長となる。東大を含めた国立大は今後、一層の業務効率化と外部資金
獲得を迫られる。

 政府は、国の財政危機を受けて、文教予算の削減を目指しており、国立大へ
の運営費交付金削減はその一環だ。全国の国立大への交付総額は「前年度比1
%削減」が適用されて以降、04年度から1兆2416億円→1兆2317億円→1兆2215億
円と、年間約100億円ずつ減少している。07〜11年度で、さらに計500億円程度
が削減される見込みだ。

 削減するだけでなく、各大学が競争的に獲得する「特別教育研究経費」は、
05年度から運営費交付金内に導入されている。質の高い教育や研究の実践次第
で、交付額は逆に増額する可能性もある。実際、東大は05年度に46億円、06年
度に47億円の特別教育研究経費を獲得しており、交付額は05年度に955億円、
06年度に929億円と推移している。これは04年度の926億円をまだ下回っていな
い額だ。

 だが、運営費交付金全体の額が減るに従い、特別教育研究経費の獲得による
増分にも限界がある。東大への交付額も、07年度以降は一層の減少が避けられ
ない見通しで、削減期間の2年間延長による影響は大きい。

 東大は、一層の外部資金獲得と経費削減を図ることで対応する。06年度予算
では、授業料や附属病院収入を計464億円、寄附金や産学連携収入を計280億円
と算出しており、今後どちらも増加していく見込みだ。また、調達改善によっ
て、06年度に10億円の経費削減を目指している。

 今回の決定に対して、石堂正信副理事(財務企画担当)は、「歓迎すべき事
態ではないが、ある程度覚悟はしていた。現在の対策を更に継続することで、
10〜11年度の交付金削減分にも対応できるだろう」と話している。

 尚、国立大学附属病院に関しても04年に、交付金を05〜09年度の5年間、前年
度比2%で削減することが決定している。だが今回の「方針」では、10年度以
降の方針については明記されなかった。

ことばファイル

運営費交付金

 文部科学省が各国立大に、用途を定めずに交付する運営資金。現在、国立大
の収入の半分以上を占める。運営費交付金の削減ルールは、国立大が法人化す
る直前の03年12 月に初めて明らかになり、全国の国立大が反発。佐々木毅・東
大総長(当時)らが「学長指名の返上も辞さない」とするなど、徹底抗戦の構
えを見せた。当初は年2%削減する計画だったが、04年の決定では年1%の削
減に落ち着いた。