http://www.janu.jp/active/txt5/houkoku060801.pdf


                                      国大協企画第91号
                                      平成18年8月1日
文部科学大臣
小坂憲次殿
厚生労働大臣
川崎二郎殿
                                    社団法人国立大学協会
                                          会長 相澤益男

       国立大学法人における附属病院の諸問題について(要望)


 国立大学附属病院(以下「附属病院」という。)は、医療人の育成と供給、
先端医療の開拓、トランスレーショナルリサーチ(TR)や臨床治験等の臨床研
究の推進、地域の医療提供等、我が国の医学・医療レベルの向上・発展に大き
く貢献してきました。また、法人化後においても、各附属病院は効率化・経営
改善に積極的に取り組み、患者数、手術件数の増加や在院日数の短縮等採算性
向上に努めてきました。

 しかしながら近年、附属病院を取り巻く環境はますます厳しくなり、今般の
診療報酬改定による医業収入の減少や新看護体制への移行に伴う人件費支出の
増大、総人件費改革による病院職員の削減、新医師臨床研修制度の導入をきっ
かけとした若手医師数の減少と診療科別の医師の偏在及び、その結果としての
地域への特定専門領域の医師供給機能の低下等、国立大学法人はその対応に苦
慮しているところであります。

 更に、運営費交付金を受ける附属病院に対しては、効率化や経営改善を進め
るための算定ルールの適用により、毎年度の運営費交付金が減額されており、
平成17年度は目標収入額を確保したものの、平成18年度以降は採算性向上にも
限界が見え、診療報酬のマイナス改定による減収等もあってその経営は誠に厳
しくなることが予測されます。附属病院本来の使命である教育・研究機能、非
採算的な医療や先端医療の提供機能、地域貢献機能が低下し、医学・医療レベ
ルの低下を来たすことさえ懸念される状況にあります。

 このような厳しい事態が今後とも続くようなことがあれば、附属病院を設置
する多くの国立大学法人では、自助努力や意欲を活かした附属病院の運営が困
難となります。我が国の医学・医療レベルの維持・発展ならびに地域医療供給
体制の確保の観点等からも、現在の運営費交付金の経営改善係数など、附属病
院に対する財政支援の在り方を見直すとともに、別紙「要望事項」について格
段のご配慮を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

                     要 望 事 項

1.附属病院の経営努力にもかかわらず、診療報酬の大幅なマイナス改定等の
特殊な要因によって、収入目標の達成が困難になった場合、特段の配慮を講ず
ること。

2.第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画に基づき病院再開発を着実に推
進するとともに、附属病院における教育・研究用医療機器の整備のための財政
的支援を検討すること。

3.附属病院が担っている高度先端的または探索的医療についても、その実情
を踏まえた適切な包括評価に係る診療報酬制度の見直しを行うこと。

4.診療報酬上の新看護体制(7対1)へ円滑に移行できるよう、看護師確保
や離職防止等に関する附属病院の取組みに対して、必要な支援措置を講ずるこ
と。

5.がん対策基本法の基本理念等に即した、がん専門医の養成やがんの診断・
治療の臨床研究に関する国立大学法人の一層の取組みに対して、必要な支援措
置を講ずること。

6.救急医の養成・確保及び救急医療体制の整備等を一層推進するため、地方
自治体からの主体的な財政支援が可能となるように、地方財政再建促進特別措
置法の運用の弾力化について検討すること。

7.国立大学法人において、地域医療体制の確保等に貢献しようとする場合の
様々な工夫・努力が実現できるよう、国として必要な支援を行うこと。