時事通信配信記事 2006年7月31日付

奨学金返還時に税制優遇=少子化対策


 文部科学省は29日、日本学生支援機構の奨学金について、2007年度税
制改正で奨学金返還時の税制優遇措置を盛り込むよう要望する方針を決めた。
学生本人が借りやすく、返しやすい環境を整備することで、夫婦が将来の教育
費負担を考えて子どもを持つことに二の足を踏まないようにするのが主目的。
また、卒業後の奨学金返還を促すことで、「貸し倒れ」防止の効果も狙う。

 同奨学金は、大学院、大学・短大、高専、専修学校専門課程の学生本人が対
象。今年度の奨学金貸与人員は109万人と10年前の2倍以上で、事業費は
1996年度の約2400億円から約8000億円に増加している。

 子どものいる家庭にとって、幼稚園と大学段階の教育費の負担感が最も強い
とされる。そこで同省は少子化対策とともに、親の所得に伴う「格差の是正」
の観点からも、返還分を所得控除対象とするなどの税制上の対応を求め、卒業
後の返還を支援することとした。返しやすい制度とすることにより、「学生本
人が学費を負担して自立する」奨学金本来の機能の強化を目指す。

 一方、奨学金事業は、学生から返還された奨学金を再度原資とするため、貸
し倒れ対策は事業の充実に不可欠。しかし、事業費規模の拡大とともに、3カ
月以上延滞している「リスク管理債権」も増加傾向で、04年度は1787億
円と01年度の約1.5倍になっている。

 このため同省は延滞債権の回収策を強化するとともに、返済の負担を軽減し、
延滞防止につなげたい考えだ。(了)