『読売新聞』2006年7月26日付

大学の特許料収入 83校で6億3800万円


 2005年度に特許料収入があった大学は83校、収入総額は6億3800
万円と共に過去最高に達したことが文部科学省の調査でわかった。

昨年度に過去最高技術移転のすそ野拡大

 調査を開始した03年度から順調に増えており、同省では「技術移転のすそ
野が広がっている」と分析している。

 特許料収入は、大学の保有する特許権をもとに企業とライセンス契約を結び、
売り上げの一部などを得たもの。

 トップの名古屋大は、赤崎勇名誉教授が取得した青色発光ダイオード関連の
収入が大半を占める。特許権は出願から20年が権利期間。だが赤崎名誉教授
の関係する特許のいくつかはここ数年で期限が切れており、名古屋大の05年
度の特許料収入は1億9900万円にとどまり、03年度の4億900万円、
04年度の3億6000万円を下回った。

 2位の慶応大は延べ180件のライセンス契約を持つ。うち05年度の新規
契約が41件。バイオが47%と多いが、幅広い分野でまんべんなく収入を得
ている。

 岩手大は04年度の189万円から一挙25倍に。表面処理に関する10件
の特許をパッケージ化し、ライセンス契約につなげた。

 日本大は歯科用のエックス線CT撮影装置が稼ぎ頭。肉眼ではわからない細
かい歯の形状を3次元画像で示す。歯学部教授と医療機器メーカーのモリタ製
作所の共同研究の成果だ。「医学や歯学系の研究者からは現場の需要を踏まえ
たアイデアが出てくるので、理工系より技術移転がスムーズ」(日大・産官学
連携知財センター)という。

 大学の研究成果が産業界に還元されているかどうかの指標として、文科省は
05年度から特許料以外の収入についても調査を始めた。遺伝子操作をしたマ
ウスや細胞を企業に頒布したり、商標登録した物品のライセンス収入を上げる
場合が増えているためだ。

 東京大は特許料以外の収入が6100万円と全大学中トップ。マウスや細胞
が4500万円と大半を占めるが、大学発の商品として販売している酒などの
商標による収入も1300万円と好調だ。

 また、広島大も特許料収入600万円に対して、特許料以外では1700万
円と第3位。特許に関連する技術のノウハウやサンプルの提供による収入で、
技術移転の相手先は中国地方の企業が多い。

 国立大学法人化による産学連携の進展で、地方の国立大の活躍が目立つよう
になってきたのが05年度の特徴だ。(滝田恭子)

 【05年度特許料収入の上位10校】
         (文部科学省調べ)
 〈1〉名古屋大 1億9900万円
 〈2〉慶応大    7900万円
 〈3〉岩手大    4700万円
 〈4〉日本大    3900万円
 〈5〉筑波大    3500万円
 〈6〉立命館大   2300万円
 〈7〉早稲田大   2200万円
 〈8〉北海道大   2000万円
 〈9〉東京工業大  1700万円
 〈10〉東北大    1000万円