『産経新聞』2006年7月25日付

国立大、小粋に変わる 焼きたてパンや本格フレンチも


 焼きたてのパンから、本格フレンチのレストラン、ブランド品にひけをとら
ない小物類−。地味であか抜けない印象が強かった国立大が、私大も顔負けの
おしゃれに変わりつつある。大学の法人化でキャンパス内の整備が各大学の裁
量に任されるようになったのがきっかけの一つで、学生だけでなく、一般の人
にも開かれたレストランやショップを展開。いまどきの受験生を集めるために
は魅力的なキャンパスづくりが欠かせない時代になっているようだ。

■大阪大

 明るい陽光がさしこむガラス張りのカフェテリア。若者たちが雑談をしなが
らゆったりと食事を楽しんでいる。

 大阪大学吹田キャンパスにある「匠(たくみ)」は、昨年11月にリニュー
アルオープン。以前は、よくある職員食堂だったが、宮原秀夫学長が音頭をとっ
て改革を手がけた。

 午前11時の開店と同時に焼きたてのクロワッサンなどが並ぶベーカリーも
宮原学長の直々のリクエストで、「仲間がつどい、ゆったりと話をしたり食事
ができる場所を用意したかった」。

 こうした、しゃれたキャンパスづくりが進められるのは、2年前に国立大学
が法人化されたことが大きな要因。学内施設の維持や管理の自由度が増す一方、
受験生も施設の清潔さや快適さを重視するようになった。阪大でも「建物が古
くて汚いから受験をやめた」といわれたことがあったという。

 阪大は昨年4月、キャンパスデザイン室を設置。「優れた研究を生み出すに
は美しい環境が必要」と改革を進めている。宮原学長は「学生が誇りをもてる
キャンパスになれば、大学のブランドイメージも上がる」と期待する。

■京都大

 かつては「バンカラ」といわれた京都大学(京都市左京区)もおしゃれに変
貌(へんぼう)している。

 平成15年の時計台の改修工事完成とともにオープンしたフレンチレストラ
ン「ラ・トゥール」は、客待ちの列ができるほどのにぎわいだ。多いときは1
日130人が訪れ、観光客も多いという。

 以前の時計台は事務部門や教室ばかりで、世界各国から訪れる学者や賓客を
もてなす場がなかった。そこで華麗な変身を模索し、コンペの末、大学近くの
同店の出店が決まった。

 同年5月に正門横にオープンした生協レストラン「カンフォーラ」も、学生
や近隣住民が気軽に利用できるカジュアルな店。平日は午後10時半まで営業
しており、研究などで帰りが遅くなる学生らの憩いの場になっている。昨秋か
ら始めた、尾池和夫学長プロデュースのカレーや、早大と共同開発したビール
「ホワイトナイル」が人気という。

 京大広報は「昔の京大では考えられないくらい様変わりした。京大といえど
も今まで通りのことをやっていてはいけないという意識が強いのは確か」と話
している。

■東京大

 レストランだけではない。東京大学(東京都文京区)は、本郷キャンパスに
東大公認グッズを販売する「コミュニケーションセンター」を開設した。店頭
には、銀座の高級専門店「和光」と共同製作した手帳や財布などの革製品、皇
室御用達のメーカーと作ったカップセットなど“一流品”が並ぶ。アミノ酸研
究に基づいて開発された「東大サプリメント」もあり、近隣の学生はもちろん、
高校生もやってくる。

 こうした商品展開について、同大広報課は「21世紀の大学は社会と密接な
コミュニケーションをとっていかなければならない。グッズも学問に親しみを
感じてもらうための道具の一つ」と話している。