『北海道新聞』2006年7月27日付

女性働きやすい北大に 研究者夫婦の同居支援 特任教員など「席」用意


 北大は、女性研究者の支援に本格的に乗り出した。優秀な人材を生かし、の
びのびと働ける環境を整えようと、本年度中には、若手研究者夫婦の同居支援
策を独自に設ける方針で、二○二○年度までに女性研究者比率を現在の約二倍
の20%に引き上げる。

 女性研究者支援は全国で京都大など九大学が本年度から三年間、文部科学省
の委託事業に選ばれた。道内は北大のみ。

 国内の国公私立大の研究者に占める女性の割合は約17%。日本は国際的に
見ても女性研究者の比率が低く、出産、育児、介護などと両立できずに仕事を
辞める人が多いことも要因とされている。北大は教授、助教授、助手など全研
究者二千八百三十八人のうち、女性が三百十八人で11%にとどまっている。

 このため、北大は一日に女性研究者支援室を開設した。女性を増員する具体
的な取り組みとして、女性研究者のパートナーの六割近くが同じ研究者である
ことに着目。子育て中の若手研究者夫婦のどちらかが北大赴任が決まった時、
札幌周辺でもう一人の職場が見つからずに同居か研究のどちらかをあきらめな
くてもすむように、特任教員や学術研究員などのポストを独自に用意する。人
件費の財源には企業の寄付金などを充てる考えだ。

 北大女性研究者支援室の有賀早苗室長は「研究者夫婦の場合、パートナーの
職場がないために初めから北大への就職をあきらめる人もいる。ポストを提示
することで道内に優秀な人材を呼び寄せたい」と話す。

 また、四月からは、学部が女性教員を採用した場合、学部が支払う人件費と
は別に、その人件費の四分の一に相当する「奨励金」を、学長の全学運用分か
ら学部に付与する制度を導入している。奨励金は女性教員の雇用期間中、支払
われ、学部は奨励金をためて昇任や新規採用の人数を増やせるしくみだ。

 このほか、修士課程や博士課程に進む時に先輩女性研究者に相談できるよう
なネットワークの確立や、将来の女性研究者を増やすための、女子中高生対象
のイベント開催も計画している。